#2 ページ23
「ワープトンネルって、ワームホールのことかな」
「ワームホール？」
今度はサトが首を傾げた。
聞いたことがないらしい。
「別の場所に移動するトンネルみたいなもののことでしょ？」
「あ、そうそう。それのこと」
「うん。俺らはワームホールって呼んでるの」
へえ、とサトが本に目を落とす。
口の中でワームホール、としばらく呟いていたが、首を傾げた。
「ワープトンネルの方がわかりやすくない？」
言いたいことは分からなくもない。
櫻井は苦笑した。
「ここではワープトンネルって言うんでしょ？ 無理に俺らに合わせる必要はないよ」
宇宙図を見れば、ソルセルリーの近くにワームホールらしきものが描かれているのが分かった。
「あぁ、このワームホールだったのか」
思わず呟くと、サトは櫻井の顔を見る。
「ワープトンネルのこと、詳しいの？」
「ワームホールは二宮の専門範囲内だよ。俺ら、ワームホールに吸い込まれてこの惑星にたどり着いたみたいだから」
櫻井の言葉に、サトが目を丸くした。
「え、そうだったの？」
「そう。ワームホールを抜けるときに、重力波に宇宙船が負けてちょっと故障して……」
そこまで言って気づいた。
「サト、俺らってどこにいたの？」
考えてみれば、途中から記憶がない。
ワームホールを無事に抜けたかどうかも確認できないうちに、意識を失ってしまっていた。
そもそも、完全に宇宙船の制御は効かなくなっていた。
あぁ、と立ち上がったサト。
「ここから歩いたら五分くらいの場所だよ。何か空から落ちてきたから、見に行ったら大きな白いものが落ちてたから」
サトの言葉に、今度は櫻井が目を丸くする。
その言い方だと。
「宇宙船、残ってるの？ そのまま落ちたの？」
へ？ とサトも目を丸くした。
「あれが宇宙船っていうやつなの？」
「そう。俺らが乗ってたやつでしょ？ エクリプス152便っていうの」
お互いに目を丸くしたまま、顔を見合わせた。
「あ、だから見たことあったんだ……ああいう宇宙船があるっていうの、本の絵で見たの。なるほどね」
サトが納得したらしく、頷いている。
「え、ねえサト。その宇宙船、今もそのままになってる？」
櫻井が思った以上に食いついてきたからか、サトが一歩引いた。
「う、うん。みんなを助けてからそのままになってるよ。助けるときに、ドアを魔法で開けたくらい」
少し引き気味に頷くサト。
「サト、そこまで連れて行って！」
「わかった、いいよ」
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作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2021年2月15日 22時
