アラニュエの森 (ページ20)

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「魔力石は学校に通う子が日常生活で困らないようにするためのものじゃん。俺、魔力石がなくても普通に魔法使えるもん。魔力あるもん」
「わかったって、マサ。ごめんね？」

まだマサはふてくされていた。

三人にもマサが機嫌を損ねた理由がやっと分かったらしい。

マサは魔力石を持っている、とサトが勘違いしたことがショックだったのだ。

魔力石を持つということは、魔力がないか、あったとしても少ない、ということを意味する。

口を尖らせて、サトを見上げたマサ。

「浮遊術学、教えて」
「えぇ？浮遊術学なんて、飛行術学とほとんど同じじゃん」
「そのほとんど同じ、が俺にはできないの！悪かったね！」

やっぱり魔力石が必要なのかな、と呟き始めたマサを見て、はあとため息をついたサト。

「わかったよ。浮遊術学ね」
「やった！サトちゃん大好き！」

サトに抱きついたマサ。

サトは少しよろけながらも受け止め、危ないでしょ！と怒っている。

櫻井はそんな二人を見て苦笑する。

なんだかんだでサトはマサに甘い。

「でも、サト。その人どうするんですか？魔力がないと、他の授業でも困るはずですよね？他の先生は何も言ってなかったんですか？」

二宮の言葉に、頭を掻いたサト。

「それが、他の先生は誰も気づかなかったんだって。僕が気づいて他の先生に聞いてみたら、気のせいじゃないかって言われたけど……念のために検査してみたら、魔力がなかったって分かったの」

え、と抱きついたままのマサも目を丸くする。

「試験官の先生だけじゃなくて、他の先生みんな気づかなかったの？」

櫻井と二宮、松本も目を丸くしている。

またはあ、とため息をついたサト。

「僕が授業をしてその学生を見るまで、うまく切り抜けてきてたみたいだね……僕の開講が遅れたのもあって、気づいたのがこのタイミングだったみたい。学園としても、今さら学校へ行く手続きを、なんて言えないでしょ」

他の先生は一体何をしていたんだ、と言いたくなってくる。

「サト先生が気づかなかったらとんでもないことになってました、って言われたけど、すでに十分とんでもないことなんだよね。僕の方でもどうしたらいいか考えてほしいなんて言われたけど、そんなの言われても困るよ」

哀れみの目を向ける二宮と松本。

対応を押し付けられる苦労はよく分かる。

「サトはそれで悩んでたの？」
「うん。あと、眠かったからあくびしたの。そしたら箒から落ちた」

はは、とマサが笑った。