僕ハ君ナシデ (ページ18)

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「家にいる」とだけ返信し、シャワーを浴びた。一度のシャワーなのに、大倉の甘い匂いはすっかりなくなっていて、自分の匂いを纏う。なんだか儚いな～と思いつつ、自分の匂いが一番安心する。

＋＋＋

「よ、お邪魔しまーす。」

あの後、「うちきて」とだけ送られてきたライン。求められてるのは身体のはずなのに、なぜか期待して胸を躍らせている自分がいた。２回目の景色なのに、なぜか緊張感が走り、玄関で固まってると「入んないの？」と声をかけられた。

履き慣れた靴を脱ぎ、アイツの靴の横に綺麗に並べれば適当でいいのに、と笑われた。
あ、この笑い方、メンバーに向ける笑い方だ。

ほとんど俺に向けられることのなかったその笑顔を、不意にしかも２人の時に見れるなんて思ってもいなかった。

「そこ、座って」

ソファにかければ、前の出来事が蘇る。少し恥ずかしくなり俯いているとテーブルに何か置く音がしたので顔を上げると目の前には上手とは言えないけど頑張って作ったんだろうな、と思われる料理が数品並んでいた。

「・・・何？これ」

何で優しくすんだよ、いつもみたいな冷たい視線で、さっさとやることだけ済まして、くれよ。

「お腹空いてるかなって思って。」

「そんなんするタイプだっけ？」

場を和ませるべく冗談めかしく言えば、

「そんなタイプじゃダメだった？」

そう言って少し目をそらしながら笑う。
都合いい男でいようって思ってたはずなのに、いとも簡単にそれを壊してくる。なあ、何で？

少し間を空けて隣に座る藤ヶ谷はあの日と変わらない。
せっかく作ってくれたものだから食べるが、藤ヶ谷の考えてることがイマイチ理解できない。

＋＋＋

飯も食い終わり、全て片付けてくれた藤ヶ谷。今は、というと藤ヶ谷は台本を読んでいて、俺はただソファにかけているだけ。

「・・・俺帰ったほうがいい？」

正直家に行けばすぐそういう行為に至って、帰らされるだけだと思ってた。

「何で？」

「いや、その、」

「ここに来て、抱かれる、とかそんなこと考えてた？」

「・・・そんな、別に」

言葉に詰まる俺にダイレクトに響く言葉。少しでもそういう行為に至る、だなんて考えてしまっていた自分がなんだか恥ずかしくなった。でもなんで？それなら俺じゃなくて横尾さんでいいはず。

「今日、泊まっていってよ。」