【クリュアペ】祈りは通ぜぬ【CS】 (ページ8)

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数分して、父が母や親戚を連れ、再び倉庫に現れる。「幽霊がいたんだ」「きっとソレが、不作を呼び寄せたんだ」と喚く父に疑う目がまじまじと向けられていた。幽霊なんているのか、と怪訝な周りを抑え、父は倉庫へと入ってくる。
そのとき。突如として、ハロルドが現れた。ちょうど根源魔法が切れたのだ。あぁ、出してもらえるとハロルドが近付くが、それを母の風魔法が良しとしなかった。恐らくその様子を見た人々が、父の幽霊騒ぎを信じたのだろう。…信じていないとしても、そういうことにしてしまえば、不必要な存在は居なくなると考えたのかもしれない。親戚たちは「お前か」「お前のせいだ」と次々に口にする。けれどハロルドはどういう意味か何も分からずに、とりあえず家へと戻ることができた。
しかしその次の日には倉庫は片付けられ、ハロルドはそこに隔離させられた。そしてその日を境に、天候不良は収まっていった。とばっちりも甚だしい形で、「彼のせいである」と証明されてしまったのだ。

以降倉庫はハロルド(幽霊)の住処となり、忌々しい離れと化した。それまで以上に関与されなくなり、生活すら一苦労という在り様。家族を恨み、堕落することも可能だっただろう。
しかし彼はならなかった。それでも、彼は誰かに見てほしかったのだ。せめて自身の出生を知らない人にだけでも、兄のように天才に見てもらいたかった。ただ一言、「凄いね」と褒めてほしかった。認めてほしかった。それのためだけに努力を重ね、重ね、重ね。学校への入学が決まり、それから五年が経った今でも、それは変わらない。努力は終わりを見せておらず、周りを見ながら技を盗み、経験を積んで自分のものへ変換させようとしている。

現在、実家には帰れない(というより帰りたくない)ため、長期休暇の際はとある人の家に居候させてもらっている。実家に帰るとしても居場所はあの忌々しい離れのみで、到底居心地が良いとは言えない上に、大掃除から始まるので苦痛なのだそう。

ちなみに兄であるレオナルド・ダフは同学園の卒業生であり、元エリュトロン寮生。一度だけではあるが、生徒会に所属した経歴もある好青年。現在20歳。
兄が卒業するまでの間の数年間は、兄と比較されないようにと息をひそめ続けていたという。