病院の５０８号室とベンチ ページ1
気分よく起き、上が紺で下が黒のスウェットに着替える。
白いサンダルを履き、ﾍﾟｯﾀﾗﾍﾟｯﾀﾗと廊下を進む。
508号室の前で立ち止まり、扉をスライドさせた。
そっと、でも少しふざけた調子で声を出す。
ニノ「さぁとしぃ〜」
真っ白なベッドへ向かって進む。
智のフワフワの茶色い髪の毛が、布団から少し出ているのが見える。
ニノ「ど？」
智の顔を覗き込むニノ。
寝ぼけ眼をﾊﾟﾁﾊﾟﾁする智。
ニノ「行けそ？」
手を伸ばし、智が起きるのを手伝う。
上下グレーのスウェットが現れる。
智が、細い足を青いサンダルにゆっくりと突っ込んだのを見届けて、
手を繋ぎ立ち上がらせる。
廊下の隅にある茶色い長椅子が、２人の場所。
ﾍﾟｯﾀﾗﾍﾟｯﾀﾗとそこへ向かってゆっくりと歩いていくニノと智。
ベンチの奥が智で、手前がニノ。
知り合った時からその位置だった。
智がゆっくりと座るのを見届けてから座るニノ。
まだ寝ぼけてる智のポワポワな寝癖頭をｸｼｬｯと軽く掴む。
くすぐったそうにﾌﾆｬﾌﾆｬ笑う智。
ここからは、中庭がよく見える。
ニノ「晴れたからいっぱいいるねぇ」
並んで、中庭の人達を観察する。
ニノ「ほら、あの人達なんか手繋いじゃってる、ﾝﾌﾌ」
外を歩く人達を観察しては口に出すニノ。
智がそっとニノの左手を繋いだ。
ニノ「ん？あ、真似？ﾝﾌﾌ」
２人は毎日のようにこうして外の人達の真似をして遊んでいる。
そこへ、肌が白く目がクリッとした青年を見つけた。
ニノ「あ、ほらまたいるよ！」
その青年は、足が悪いのか杖で体を支えるようにして歩いていた。
通りかかった看護師と話をしている。
彼の特徴は、口を尖らせながら喋るところ。
２人はいつもどちらが似ているか真似をしては笑っていた。
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作者名：天の子 | 作成日時：2019年7月14日 14時
