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炎を引っ込めれば、転がるのは死体だけ。
指を伝って、血が滴り落ちる。
『逃げたところで…』
鼠共は壬生に追わせる。
葵は、血だらけの手をただ見つめた。
血生臭い髪。
返り血でべたつく肌。
もっと上手くやれただろ?
そう問う自分がいる。
確かに、上手くやれた。
本当は、相手に死んだことすら気づかれずに殺せた。
でも、しなかった。
弄んで、痛めつけて、辱めて、穢して、蔑んで
ただ、自分の憂さを晴らす為にだけに惨い殺し方をした。
葵は、頭上の紅く燃える紅月を見上げた。
欠けることなく、皓皓と光を放つ炎を睨みつける。
皮肉だと思う。
大好きな人の大好きな技。
それが、当て付けのように感じる。
空から降ってくる紅丸を森羅が拾うのを眺める。
なら、私は?
仇も奪われ、復讐する機会すら与えられなかった
私のこの感情は、どうしてくれる?
行き場のない憤り。
向ける相手のいない殺意。
増すだけの憎悪。
これにどう折り合いをつけろと?
どう始末しろと言うんだ。
欠けた心が叫ぶ。
血が沸騰する。
そんなに憎いのなら加わればよかっただろ?
また、頭の中で自分が問う。
相模屋は新門を立てる為にいる。
新門の為に泥被って、自分を殺す生き方。
目を閉じれば、意識が沈んでいく。
自分の境界が曖昧になって、感覚が闇に溶けだす。
このまま闇に完全に溶けて
自分という存在が無くなれば良いのにと思う。
目を開ければ、一面の黒。
それに浮かぶ、2つの満月。
鋭い光を発し、葵の輪郭を浮かび上がらせる。
兄さんが必死に遠ざけたかった運命が
まざまざと目の前に姿を現す。
この業からは逃げられない。
何処まで行っても付いてくる、血の定め。
月がまた欠けていく。
もう1度目を開ければ、相も変わらずの紅月。
何も知らず、何処までも満ち足りた月。
自分とは大違いだと思う。
町の混乱は治まり、いつもの静けさを取り戻しつつある。
役目を終えた壬生がすり寄ってくる。
黒い炎はいつの間にか、通常の赤に戻る。
『ご苦労』
と、炎を撫でれば、執拗に左の甲に頭を押し付けてくる。
何だと視線を落とせば、指先が小刻みに震えていた。
殺しすぎたか…
焔人や侵入者を屠る過程で奪った熱が多すぎて
身体が処理出来ずに、痙攣を起こしているのだ。
熱を放出するか、大人しくしていれば治まる程度の事。
葵は、気にも留めることなく
紅月に背を向け、暗い夜の中に消えていった。
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たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» 長文になってしまい、大変申し訳ありません。以下が、この作品に設けた私なり定義です。なっちゃん様や他の読者様には、ご不便をお掛けしますが、なにとぞご容赦を頂ければと。 (2020年7月12日 8時) (
レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» 2つ目は、私個人の思い入れです。葵とは、太陽向かって成長する植物です。漢字自体も太陽と関わり深く、それで紅丸との関係性を表現しています。また、紺炉と紅丸の名前に色が含まれており、設定上紺と同系色の響きのある名前でイメージを統一する必要があったからです (2020年7月12日 8時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» 1つ目は、物語の雰囲気を優先したからです。薄々とは感じて頂いていると思いますが、この3人の関係にはウェイトを置いていて書いております。その為、名前というキャラクター構成の要となる部分が不確定だと、物語を引き締められないと判断し、使用しない事にしたのです (2020年7月12日 8時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
たんぱく質(プロフ) - なっちんさん» コメントありがとうございます。名前の変更はコレを書くと決めた時に、熟考を重ね、しないと決めたので、大変申し訳ないのですが致しかねます。長文になりますが、名前変更をしなかった理由は2つあります。 (2020年7月12日 8時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なっちん(プロフ) - 初めまして^^*お話とても好きです∩ω<`あの名前の変換はできないのでしょうか(;o;)?? (2020年7月12日 7時) (携帯から) (レス) id: 86e7fd8910 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たんぱく質 | 作成日時：2020年7月8日 21時
