第187話 ページ44
「．．．の、前に」
「「？」」
「あんた」
『え？』
ぼーっと話の流れを見守っていたAは、突然ビスケから指を指されてびくりと体を揺らす
「こいつと今から戦いなさい」
『．．．え？』
「は！？なんでこいつだけ1人でやらせるんだよ！！」
「決まってるわさ
あんたら2人とこの子じゃレベルが違いすぎるから」
「っ！」
「私はまだあんたの実力を測れていない
修行が必要かどうかもわからない
だから1人で戦ってもらう
いいわね？」
『．．．うん、いいよ
ただ．．．』
「？」
『そいつが相手じゃ私の実力は測れないよ』
「何．．．っ」
見るからにただの子供であるAに下に見られ、ビノールトは怒りをあらわにする
しかしそれもすぐに収まり、冷や汗をかき始めた
見るからに子供
しかし、格上だと気づいているのだ
先ほど、ビスケがキルアを殴った時に僅かに漏れたAの殺気
遠くにいたビノールトも確かに感じていた
「ルールは同じここから出ることは許さない
ただし、殺しはなし
殺しちゃったらこの子らの相手ができなくなるしね」
『わかってる
参った、って言わせればいいんでしょ』
「ま、そういうことだわね
．．．それじゃあ、始め！」
ビスケ達3人が上に上がり、岩壁の中にはAとビノールトのみ
ビノールトは鋏を構え、Aはそんな彼をただじっと見つめている
『．．．さて、と
さっさと終わらせよっか』
2人が待ってるからね、とにこりと笑い一歩また一歩と近づくA
ビノールトは下がりそうになる足をなんとか留まらせ、鋏を強く握りしめる
一気に駆け出し、鋭い切っ先がAに突き刺さる．．．
．．．直前で、ビノールトの手から鋏が離れ宙を舞う
「っ！！」
Aが足を振り上げ鋏を蹴り上げたのだ
ビノールトが次の鋏を取り出す前に、振り上げられたままの足を一気に振り下ろす
『．．．．．．早く降参してよ』
頭にぶつかる直前で、止められた足
ビノールトはその一連の動きについていけず、完全に体が固まってしまっていた
脂汗が吹き出し、手足が震え始めたビノールトの耳にAの冷たい声が降り注ぐ
「．．．」
『．．．早く』
「．．．」
『言え』
黙り込むビノールトに痺れを切らしたAが僅かに殺気をのぞかせると、震えた声で．．．
「参った．．．っ」
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作者名：SHINKAI | 作成日時：2022年9月9日 19時
