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第53話 ページ8

「ミケ〜!おいで〜!」


ゼブロさんの呼びかけからすぐに、森の中から生き物の息遣いと大きな足音が聞こえてきた。
しばらくして、森から姿を見せたのは巨大な獣。

丸い瞳は暗く、感情を感じさせない
鉛のようなものだった。

そんなミケを見たゴンは、怖い、戦いたくないと素直な気持ちを吐露する。

素直な彼だからこそ、引き際も潔い。


『...』


しかし、この場で1人
諦めていないものがいた


「さて、君たちはいつまでここに?」


「キルアに会うまで!
 それまでは絶対に帰らない!」


そのゴンの言葉に、ゼブロがどこかに案内しようとした時


「離れなさいっ!!」


「「「ッ!?」」」


ゼブロの焦ったような声が響き、3人の体がびくりとはねる。
彼の視線を追った先には、地面に伏せるミケのすぐ足元に立つAがいた。


「おい何してんだよ!」


「待て!ミケの様子がおかしい」


「え...」


止めようとするレオリオを制したクラピカ
その言葉に、全員がその光景に見入る


『はじめまして
 私Aっていうの』


...


『あなたのご主人のキルアの友達
 あなたのことはキルアに聞いたことあるよ

 番犬なんだってね
 偉いのね
 言いつけを守って、しっかりお仕事して』


...


Aが一歩近づくもミケは動かない
じっと鉛の瞳でAを見つめている

手が届く距離まで近づく

Aは笑みを絶やさない


『触ってもいい?
 あなたとも、仲良くなりたいの』


...グル


「!
 信じられない...」


4人の目に映ったのは、ミケの頬を撫でるAの姿。
少し背伸びをする彼女を気遣うように頭を下げるミケは、狩猟犬などには見えず純粋にAに撫でられ喜び、甘えているようだった。


「Aは...森で育ったんだよ
 俺なんかよりもずっと色んな動物と暮らしてた」


「そんな彼女は、動物と心を通わせることができるんです」


「まあ、色々訳ありだがな」


「心を...しかし、ミケは」


「Aにとっては、狩猟犬だとか
 そんなの関係ないんだ

 ミケは今Aに心を開いてて、Aもきっとミケを本当の友達として接してる」


「(ゴン...)」


『ゼブロさん』


「!は、はい」


『本当に怖いのは訓練された狩猟犬なんかじゃないんですよ

 本当に怖いのは...ここまで完璧に生き物を従えさせる、人間なんです』


「...」

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作者名:SHINKAI | 作成日時:2022年8月24日 22時

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