第18話 ページ20
腰上まで伸びた青藍色の髪から、ポタポタと幾つもの滴が滴り落ちる。
『...』
床に大小様々な大きさな雫が落ち色を変える。
白花が、ジッとそれを見つめている。
“何があっても誇りだけは捨てるな
気高く在り続けろ“
『誇り...』
この言葉を私に言ったのは誰だったのだろう
あの人は私のことを知っていたのだろうか
私が進むべき道を知っているのだろうか
“そうすれば、いつか自分を見つけられる“
本当に?
私は私を見つけることができる?
『...もう寝よう...』
まだ濡れたままだった髪と体を雑に拭き、服を着てからシャワー室を出た。
煌びやかな輝きを放つ窓の外を横目で見ながらタオルを引きずってダラダラと廊下を歩く。
『...血の、匂い』
鼻をついたのは、異常なまでの生臭い鉄の匂い
小走りで匂いの元に向かうと、見覚えのある銀髪が目に飛び込んできた。
『キルア?』
「!!」
相手は弾かれたようにこちらを振り向いて、その目に私を写すとひどく動揺したそぶりを見せた。
キルアはバツが悪そうに顔を背けると同時に私から離れるように歩き始め、私はそんな彼を引き止めるために赤色に染まった手を取った。
「!
何...」
恐らく彼はこの後言われるであろう言葉に絶望し、ひどく怯えていたのだろう。
声に覇気はなく、僅かに震えている。
しかしそんな彼にお構いなしに、Aは握った手を取り今自分が来た道を戻り始めた。
「!?」
転がる死体に目もくれず、彼女は目的地に向かって歩を進める。
そんな彼女の行動にされるがままついていくキルアの頭にはいくつものハテナが飛び交っていることだろう。
『はい、着いた』
「は?」
『タオルとか全部中にあったから
私ここで待ってるからさっさと入っておいで』
「は?いや、ちょ!」
『はいはい、つべこべ言わずに入る!』
そう言って無理やりキルアを押し込んだ場所はシャワー室だった。
汗だくでおまけに血で汚れた彼の姿を見た彼女の頭に、一番に浮かんだことは
シャワールーム連れていってあげよう
だったのだ。
まあもちろんそんな彼女の真意など知りもしないキルアは、訳がわからないなりに言われた通りシャワーを浴びていた。
Aは手に持ったままだったタオルで手についた血を拭き、無駄に汚れたそれをゴミ箱に突っ込んだ。
もう彼女の頭には先ほどの死体など微塵も残っていなかった。
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SHINKAI(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます!そう言って頂けるとすごく嬉しいです!これからも作品をよろしくお願いします! (2022年8月31日 0時) (レス) id: 9829dd467f (このIDを非表示/違反報告)
蒼 - HUNTER×HUNTERの世界観にあった文章でサクサク読み進めることが出来ました。とても面白かったです! (2022年8月30日 23時) (レス) @page48 id: 1c5f686e4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SHINKAI | 作成日時:2022年2月11日 4時