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第11話 ページ13

キルアside


俺の手を握って走るAは、試験管を追い抜かし、あっという間に建物の前までたどり着いた。

俺もこいつも、息切れはしていない。
でも突然のことで俺の心臓は少し早く脈打っているのがわかった。

やっと立ち止まったAが、ゆっくりと肩越しに振り返る。


手はまだ、繋がれたままだ。


『キルアはキルアだからね』


「え...?」


『キルアはキルアで
 他の誰でもなくて

 これまでの時間も、この先の人生もキルアのものだから

 他の誰かの手にできるものじゃないんだよ』


「...」


体ごとこっちを向いて、両手を握ったAが真っ直ぐに俺を見た。

Aの色素の薄い瞳に、呆然と立つ俺が見えてなんとも言えない感情に呑まれる。
それでも目を離せなかったのは、こいつが他の誰でもない“俺“自身を見てくれていたから。


『自分の生きたいように生きるってすごく難しいと思うんだ
 
 でもキルアには理想を叶える力がきっとあるよ
 家出だって、その第一歩だよ

 キルアの人生なんだから、好きに生きていいんだよ』


「...!」


初めて、そんなことを言われた。

俺は今まで兄貴や親父の言うとおりに生きてきた。
この先の人生は、きっと俺自身の人生にならないんだと、どこかでそう思っていた。

でも、今
Aの言葉で何かが変わった気がした。


『一緒に合格しようね、キルア!』


「...ばーか」


後ろからいくつかの足音が聞こえてきて、俺はゆっくり握られた手を離す。

Aの言葉に素直に答えることは出来なかったけど、目の前のそいつが優しく笑っていたからどこか安心できた。

きっと、俺が言えない言葉を、少しはわかってくれてるんだろう、って。

これが勘違いでもいい
今はただ、左手に残った温もりをそっと心に刻もう。


「ばーか!」


『あ!2回も言わなくていいじゃん!』


ヘトヘトで座り込む受験者たちを尻目に、俺たちは疲れも知らずに笑い合う。


「(あぁ...俺、こいつと友達に、なれるかな...)」


淡い期待が、心を満たした。


『キルアー暑いー
 日陰行こうよー』


「へーへー」


その感覚に浸りながら、手で顔を仰ぐこいつの要望に応えるため少し大きめの木陰に揃って腰を下ろした。


キルアside終了

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設定タグ:HUNTER×HUNTER , ハンターハンター , キルア   
作品ジャンル:アニメ
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SHINKAI(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます!そう言って頂けるとすごく嬉しいです!これからも作品をよろしくお願いします! (2022年8月31日 0時) (レス) id: 9829dd467f (このIDを非表示/違反報告)
- HUNTER×HUNTERの世界観にあった文章でサクサク読み進めることが出来ました。とても面白かったです! (2022年8月30日 23時) (レス) @page48 id: 1c5f686e4f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SHINKAI | 作成日時:2022年2月11日 4時

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