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最近は、幻覚が激しいのかもしれない…
鬱を困ったように見れば、彼も同様困ったように笑った。
でも、声が聞こえなかったのは、彼が口を鉄マスクのようなもので覆われていたから。
急いで席から立ち、彼の口元に手を当ててガチャガチャと螺を回す。
申し訳ない気持ちは、どうも彼を他人だと思っている感情がないからだろう。
案外簡単にとれそうなそのマスクの設定に驚きつつ、動ける私と完全に封じられている彼の違いに疑問を憶えた。
私が螺をいじっている間、彼は私を見て離さなかった。
ガチャンと音がし、鉄マスクが外れる。
機械音痴な私にもはずせるようで良かった。
彼は私を真似して息を吸った。
「…大丈夫、？」
「あ”ぁ、、ぅん、、、、あんがと。助かったわ」
声は掠れ気味ではあるものの、出るらしく安堵を覚える。
他の拘束器具もこの調子でとれるんじゃないかと、選別とかは面倒くさく、手当り次第に手をのばす。
これが解ければ、この世界からも解放されるんじゃないかと期待もしつつ。
先は長そうだが。
彼は相変わらず私を見て離さない。
筆者の気持ちなんてわからない私に、彼の気持ちなんぞわからない。
結局は国語も例文を記憶する暗記教科なのだ。
次に発される彼の言葉で更にわからなくなった。
「主…契約、結ぼ。」
「え？、、どういうこと…」
「しなくても此処からでれる。」
「う、うん」
「でも、したい」
「ん？……いや、別にヤバいことじゃなきゃいいんだけど。」
鬱は明確な詳細を話さない。
別に断る精神は今のところないのだがと、彼の瞳を見つめ返せば、それは焼けるほど熱かった。
彼は此処を知ってそうな口調だ。
来たことがあるのだろうか、その時の脱出方法はと積もりに積もる話がでてくる。
こういうのを自分勝手というのだろう。
ソッと落ち着かせるように自身の手を擦った。
「…この部屋はな、僕と主だけの契約の場所。
主が不可解な存在である僕を、具現化したんも此処だし、僕と主の存在自体も此処におかれとる。
きっと、主は僕以外ともこういう部屋を持ってると思うで。
でも、僕は此処だけ。」
「、、そうなの？」
「そう。此処で主が鎖、なわば契約を外せば僕はまた無垢な存在として彷徨うことになる」
そう鬱が言い終わったときに、彼の腕を縛っていた鎖が外れた。
緩い、緩い。頑丈さの欠片もない。
一つの鎖が長いだけで、本来の鎖の数は多くない。
彼の言葉に、外した鎖を見返せば何処かに消えていた。
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