恋と笑いは紙一重５【芸人短編集】

聲の主 【浜田祐太郎】 ページ30

瀬良子さんのリクエストです。
※男主です。
※｢聲に癒｣の続編です。









・


新幹線に乗って、どれだけ経ったやろうか。俺と溝口は仕事で、大阪から東京へ行くために新幹線に乗っていた。



ぼうっとしていると、隣の座席に座っていた溝口が俺に｢なぁ｣と声をかけてくる。






溝口｢お前ってAのこと好きなん？｣


濱田｢なんやねん、いきなり。｣


溝｢いや、好きやろ。確かにAは女みたいな声やけど男やで？｣


濱｢うーん。｣





俺はしばらく考える。このまま考え詰めで溝口にしばらく返事をしないのもアレなので、取り敢えず話し始めることにした。





濱｢確かに俺は生まれつき目ぇ見えへんから、此の方男と女の違いを見たことはない。だからと言って女の声みたいなAを男やなくて女として見てるわけでもあらへんしな。｣


溝｢ならなんやねん。｣


濱｢中身や。｣


溝｢はぁ？｣






きっと溝口は今、しかめっ面をしているに違いないやろうな。俺は少し肩をすくめて、話を続ける。





濱｢人を好きになるんはよく"見た目やなくて中身"とか言うやろ？アレやねん。俺は目ぇ見えへんくて、Aがどんな見た目してんのか分からへんけど、一緒におるとソイツの中身が分かる。俺はそんなAの中身に惚れてん。｣






その言葉ひとつひとつに、
嘘なんてなかった。



Aとおると
毎日が楽しくて楽しくて仕方ない。


Aがおらへんと
哀しくて寂しくてたまらない。


Aが笑っていると
俺かて自然に笑えてきてまう。




中身から向かって来てくれるAに、
俺は完璧に惚れていた。






溝口は、俺に分かるようにため息をついた。





溝｢ま、誰に惚れようがお前の勝手やけど。｣


濱｢勝手にさせてもらうわ。｣








ふと、携帯の着信音が鳴る。
俺は携帯をﾊﾟﾁﾝｯと開いて耳に当てた。





聲の主は、俺の惚れているヤツ。

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