春鉛 (ページ37)

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37:昼間のページ37

あれからなんとか午後は立て直して、仕事もなんとか30分の残業で片付けることが出来た。

「終わった？なら帰ろうぜ」

んー、と体を伸ばしていたら隣の京本が見下ろしてくる。

キューティクルきゅるきゅるの髪がさらり、と落ちて京本の頬にかかる。

「ん。ちょっと待って準備するから」

「10秒以内な」

「ねぇ無茶すぎる！」

慌てる私に京本は少しだけ微笑む。

やっと、いつもの京本に戻った感じ。

「終わった！」

「おせーよ」

そう言いながらもなんだかんだで待っててくれる京本は優しい。

2人並んで駅までの道を辿る。

私たちの前には同じように仕事終わりなのか駅に向かうサラリーマンの集団。

「昼間の、」

もうちょっとで目の前のサラリーマンの集団に追いつきそうってとき。

京本がそう言って歩みを止めた。

「昼間の？…ミスしまくってた件なら迷惑ごめん。明日はちゃんとやる」

「違くて。阿部くんが言ってたこと」

「阿部くん？」

「恋愛関係でなんかいいことあったのか、って言ってたじゃん。A、ノーコメントって言ってたやつ」

「あぁそのことか」

「…正直なとこどうなの」

京本がこちらに視線を向ける。
その視線は、何かを求めているようなそんな熱を持っている気がした。

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