帝都活劇 泡沫モダニズム【オリジナル】

＊ ページ9

こりゃ駄目だ。暫く年下の振りをしよう。

「全くもって違います、否、ある意味そう？」

「お家の電話番号とか知ってる？」

「いや、実は家は貧乏で電話が通っていないん、です」

「え、そうなの？え、じゃあ……如何しよう」

何、此の時代の人達は家に電話が有るのが普通なのかい。
どんだけ金持ちなんだ。それとも値段が庶民にも手が届くようになったのだろうか。
これでは電話交換手の人も大変だろうに。

「取り敢えず、交番行ってみる？」

「え、嫌です。絶対に無理です。」

何故迷子如きで警察の方々のお世話にならねばいけないのですか。
だが彼は半ば僕の事を鬱陶しく思う様になってきたのだろう。

「じゃあ君は俺に何をさせたいの？」

「ちょっとばかし僕の調べ事に付きあって欲しい」

「え、ちょ、どゆこと」

「時間はあるかい？」

「まぁ……」

「付いてき給え！」

「えぇ！？」

僕は強引に彼の腕を引っ張って、適当な方角に向かって歩いた。



「君は、此の辺りに図書館があるかご存知ですか」

「図書館？えーと、確かあるけど」

「其処まで連れていってはくれないですか？」

「いいけど、何故？」

「いやぁ、昔の事について知りたくって！」

先程の少年は、昭和の次の次の元号だと言っていた。何だったかは忘れたが。
ならば、歴史書に大正昭和の事は刻まれている筈だ。其処に僕が生きていた……と云うより普通に過ごしていた日常や世間の事情が書かれていれば此処は未来、即ち、僕は転生したのだ。
無ければもう分からない。

「へぇ〜勉強熱心だね」

「いやぁ、そこそこ良い成績取ってるんですよ」

「いいなぁ、俺この間のテスト平均点以下だった」

「どうにでもなるさ」

今の教育がどうだか分からないから、どうにも口出せない。
歴史の授業にひょっとして大正とかあるのだろうか。

「歴史は好きですか？」

「あ、結構好きだよ」

「何時代が？」

「んー……戦国時代も好きだし、そうだなぁ、後は明治とか大正あたりかな。日本史だとね。世界史は、古代ローマ……産業革命辺りも好きかな」

よし来た！！明治大正があるなら、日本の未来で此処は間違いない！
産業革命とかもあったなら大丈夫だ。この世界は僕の生きていた世界線だ。

「大正時代とかってどういう出来事がありました？」

「えー？えっと……例えば、米騒動とか、第一次世界大戦、関東大震災とかかな。世界的にならソ連が出来たとか。大正時代興味あるの？」

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す