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第八話:上弦との攻防 2 ページ10

上弦の壱が言葉を紡いだ瞬間、自分の左腕が握り潰された。

自分の体に走った痛みに、膝をついて絶叫を抑え込む。


「ッっ……ァ”…………!!!!」


「腕を握りつぶされて……絶叫を治めるか……
 やはり、お前は……鬼となるのに相応しい……」


上弦の壱は当然のように、自分が握っていた刀を真っ二つにへし折った。


「これで、やっと……落ち着いて、話せるだろう……」


「話すことなんて、何も無い……!鬼には、ならないッ……!」



左腕が握り潰されたことによって、先ほど、女性を庇った時に斬られた箇所が、
もう一度、血を吹き出した。


呼吸を使って止血をしようとするが、圧迫によって、それは叶わなかった。



「あぁ……出血を、止められないのか……これは、誤算だった……
 今、止血をする……」



上弦の壱が左腕から手を離し、着物の懐に手を入れ、手拭いと薬の匂いがする
包みを取り出した。


直ぐに、その場を離れようとするが、今度は右手を掴まれ、動くことが出来なかった。



「随分と……痛いだろう……直ぐに、両足の骨を折るべきだった……
 すまなかったな……」



おおよそ、鬼が人間に対して使うものでは無い言葉に、眉を顰める。

何か、企んでいるのか。自分を鬼にする為に、懐柔しようとしているのか。


そんな考えが自分の頭をよぎる中で、上弦の壱はテキパキと左腕に薬を塗って、
破いた手拭いを、傷口の上に巻き付けた。



「この、薬ならば……直ぐに痛みも、引くことだろう……
 腹の傷は……鬼となれば、直ぐに治る……何も、問題は無い……」


「鬼には、ならねェって……!言ってるだろうがッ……!!」



ヒュウ、ヒュウと、風が逆巻くような音が、鼓膜に響く。



「あぁ、呼吸器も……やられているのだったな……体温調節も……乱れている……
 その体では……食事もまともに受付けていない筈だ……」


「ヒュウッ……!げほっ、ゴホッ……!!ヒュッ……!!」




長く、戦っていたせいか、口からは、いつものように血反吐が吐き出された。


呼吸をするための喉笛からは、風が逆巻くような音が聞こえてくる。


女性を逃がす時に受けた腹部の傷は、呼吸によっての止血がしきれず、
少しずつ、血を溢れさせていた。




――このままでは、『最後の手段』が取れなくなる。




そう思って、必死に呼吸を整えようとしていると。ふと、自分の体が、温かくなった。



いつの間にか、自分の体は上弦の壱に抱きすくめられていた。

第九話:上弦との攻防 3→←第七話:上弦との攻防



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 黒死牟   
作品ジャンル:恋愛
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神亜(プロフ) - とても面白です! 日輪ちゃんはどうなってしまうのか...とても気になります! 更新、無理しないで頑張ってください 応援してます 続けぇぇ (2020年5月30日 9時) (レス) id: 7ae973559f (このIDを非表示/違反報告)
- 続いてええええ! (2020年4月14日 23時) (レス) id: 584f216f44 (このIDを非表示/違反報告)
青鈴 - とてもとても好きです!!私が頭のなかで思い描いてた話と近いので見ていて楽しいです! (2019年9月13日 16時) (レス) id: 681f1f52c6 (このIDを非表示/違反報告)
大福もやし - 今後の展開が、気になります (2019年9月9日 3時) (レス) id: 46531bb7b7 (このIDを非表示/違反報告)
玲音チャン - めっちゃ好きですぅぅぅぅぅぅぅうぅぅうう!!!!!!更新頑張って下さい!応援してます! (2019年8月27日 21時) (レス) id: b000323d2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露草 | 作成日時:2019年7月11日 3時

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