顔合わせは必要だよね？ ページ3
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作業部屋から出て、キッチンで紅茶を飲みながら一息つく。まだ夏には早いが、桜も時期を過ぎて夏に向けて緑が多くなったように思える。先日隣の劇団寮の支配人とスーパーで会った時の事を思い出した。
『最近寮が賑やかですねー』
『騒がしくてすみません。実は劇団員が揃ったので旗揚げ公演を控えて稽古をしているんですが、なんせ公演まで時間がなくて劇団員も裏方組も毎日てんやわんやなんですよ！』
『そうなんですね。私で出来る事であればお手伝いしますよ？』
『本当ですか！？正直そう言ってもらえると非常に助かります！今困ってる事となると、劇中に流す音楽…が1番大きいですかね…』
『あ、それならやりますよ？』
『本当ですか！？やったー！ありがとうございます！！』
「ふふっ、支配人さんったら子どもみたいにはしゃぐんだもん。可愛いなぁ」
スーパー内にも関わらず、お菓子を買ってもらった子どものようにはしゃぐ松川を思い出して無意識に口元が緩んだ。松川からお願いされた事は決して簡単な事ではない。お芝居に合う音楽を作り出すには、自分もお芝居の事をもっとよく知らなければいけない。近々稽古にお邪魔したいと申し出たら「劇団員達には自分から話しておきますね」と意気揚々に返されたが、あの日以来松川から何も連絡がない事が気になる。まさか忘れてるんじゃないか…そういえば買い出しの帰りに会うとやれあれを買い忘れた、あそこに寄るのを忘れたと言っていた事が多い。
「可愛さと信用は別問題だよなぁ。でもこっちから引き受けるって言ったから、こっちから挨拶に行った方がいい？その後タイミング良ければお稽古も見せてもらおうかなぁ」
そうと決まれば早速支度に取りかかろう。思い立ったらすぐ行動、これは私が作曲を行うにあたり大事にしている事だ。いつ何処でメロディーが思いつくかわからないので、記録癖を身につけるようにしている。それが他の方面でも活かされているので、きっと良い事なんだろう。
簡単に化粧をし、外行き用の服に着替え、隣のMANKAI寮へと足を運んだ。
(MANKAI…満開…)
(果たして劇団員達は花か蕾かそれとも種か…)
(わくわくしますなぁ)
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作者名：渡邊 | 作成日時：2019年8月16日 12時
