クラスメイトとして ページ43
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「(いつまでもこうしていても仕方ない、さっと返してすぐ戻ろう。よし、)」
やっと決心がつき、折りたたみ傘を持って席を立つ。お礼を言って返すだけだ、大丈夫私はやれば出来る。
決心が鈍る前にと真田の席のある方を向いた瞬間、
「やぁ八神さん、おはよう」
「……………」
「八神さん?」
「…どうも」
目の前に真田の所にいた筈の幸村がいた。何故だ、彼は先程まであそこにいた筈。いつの間に…。両手を後ろに回しニコニコと笑顔を向けてくる彼。女子か。
「屋上ぶりだね。元気にしてたかい?」
「まぁ…それなりに」
「それは良かった。最近中庭に来てくれないから、話し相手がいなくて寂しいよ」
「寂しいと言われても1回しかあそこで会った事ないんだけど…。あの、ちょっと用があるので行っていいですか?」
「あ、そうなんだ。ごめんね引き留めて」
じゃあね、と軽く手を振りながら幸村は真田の席の方へ戻って行った。おいおい余計に行きにくくなったじゃないかふざけるな。いや私の言い方も悪かったか。素直に真田に用があると言えば良かったか。自分で自分のミッションのハードルを上げてどうする。
もうこの際テニス部という言葉を頭から無くそう。ただのクラスメイトの真田弦一郎に折りたたみ傘を返しに行く。テニス部の巣窟(?)に足を踏み入れに行くのではない。そう自分に言い聞かせ、真田の席へと向かう。
「真田、おはよう」
「む?八神か。おはよう」
「あれ、用って真田にだったの?そう言ってくれれば良かったのに」
「風紀委員の事を気にしてたのは弦一郎に用があったからか」
私もそう思ったよ…傷口を抉るんじゃない。幸村に先程と同じような笑顔を向けられ思わずげんなりする。自分で言うのもなんだが、あまり表情豊かな方ではない。だが今回は相手にもげんなりしてるのがわかるかもしれない。
「何か用か?」
「これ、ありがとう。助かった」
「あぁ、昨日の傘か」
「うん。濡れて帰らずに済んだよ。今度お礼を…」
「礼には及ばん」
「…じゃあこれ、」
「む?」
「手出して」
そう言うと、怪訝そうな顔をしながら手を出す。ポケットから出した物を真田の手の上にに置いた。常備してるサイコロキャラメルだ。
「あげる」
「………」
真田はポカンとした顔をして黙り込んでしまった。これ以上ここに用はないので、「じゃ」と言って自分の席に戻った。
(…菓子)
(ふっ、取り締まらないのか?風紀委員)
(た、たるんどる…)
(ふふっ、形無しだね)
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otohsun08050054(プロフ) - ヤバい!めちゃくちゃ面白いのですが!もっと早くこの作品に出逢いたかった(>_<) (2020年7月28日 9時) (レス) id: 736f999e12 (このIDを非表示/違反報告)
渡邊(プロフ) - もんたろさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をいただき感激です…!不定期更新ではありますが、完結までお付き合いいただけると幸いです(´ー`*) (2017年12月2日 0時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
もんたろ(プロフ) - テニス部の私生活?って言うんでしょうか…それがなんだか自然体って感じですごく好きです。登場人物達の雰囲気が皆やわらかくて読んでいてほっこりします。更新頑張ってください! (2017年12月1日 23時) (レス) id: 47cdc4e065 (このIDを非表示/違反報告)
渡邊(プロフ) - 和堂 桜さん» コメントありがとうごさいます!1つの話で詰め込みたい内容が多すぎて今みたいな感じになっております…。アドバイスいただいた内容を参考にしながら徐々に改善していこうと思います!ご指摘ありがとうございました(´ー`*) (2017年11月26日 1時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
和堂 桜(プロフ) - 内容は魅力的なんですが・・最初の方から、「」以外の説明?みたいなところが文字がつながりすぎて読みにくいです・・。改行?とか空白を多くすると読みやすくなるかと・・すみません!!もったいないなーと思いまして!! (2017年11月25日 20時) (レス) id: 5cbf3e7e7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渡邊 | 作成日時:2017年10月6日 18時