【庭球】平穏に過ごしたいだけ

レベルの低いミッション ページ41

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翌日。昨日の雨もすっかり止み、青空が広がっていた。真田から借りた黒い折りたたみ傘を鞄に入れ、いつもと同じ時間に家を出る。

今日も風紀委員が校門の所に立って活動をしていた。委員の中に真田もいて、傘のお礼をしたかったが活動中に話しかけるのも申し訳ないので挨拶だけして大人しく教室へと向かった。


「おはよーAちゃん！」
「おはよ」
「おはよう」
「…おはよ」


教室に入ると柳の席で2人が話していた。彼がテニス部と発覚して以来、なるべく悟られないようにはしているが少し距離を置いた態度になってしまっている。これに関しては、今まで勉強を教えてもらったという恩がありながらこの様なので本当に申し訳ないと思っている。因みに村木さんは私の心の内を知らないし、私の態度にも気付いていないのでいつもどおりの調子だ。本当に良い子だな君は。


「ねぇ、朝の風紀委員のやつっていつ終わるの？」
「挨拶運動の事？もうすぐ朝礼だし、そろそろ終わるんじゃないかな？」
「そう…ありがと」
「なんかあったの？」


柳の席から私の席の隣に移動し、私の椅子の隣にしゃがみこむ村木さん。こら、通行の邪魔になるよ。必然的に上目遣いでこちらを見る彼女を見たら、こんな注意も出来なかった。くそぅ、可愛い。村木さんの顔を見ながら返事を考えていると、後ろから声が聞こえてきた。


「風紀委員なら50分に活動が終わり、それぞれの教室へ解散する。誰かに用があるなら、朝礼の後の方がいいぞ」
「…はーい」
「……」


声の主に視線は向けずに返事だけ返す。柳の顔を見てないからどんな顔してるのかわからないけど、きっと解せぬと言いたげな顔をしているのだろう。重ね重ねになるが本当に申し訳ない。


「(私の平穏な日々の為…何事にも犠牲は付きものだ…)」


そんなこんなで委員会を終えた真田が教室に戻り、まもなく朝のHRが始まった。



＊

「何故だ…」


1限目の前の休み時間。真田に折りたたみ傘を返そうと取り出したはいいが、問題は他にあった。


「もうじき合宿があるんだって。楽しみだな」
「うむ。普段では行えない練習もできるだろう」
「場所を調べたが、環境も良さそうだ」


今日に限って柳と幸村が真田の席に集まっていた。か、返しにくい…。折りたたみ傘を持ちながら固まるという側から見たら可笑しな光景だ。変わらず空は悲しい程青空が広がっている。



(こんなミッションもクリア出来ない程)
(私のレベルは低かったのか)

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