【庭球】平穏に過ごしたいだけ

再会の紳士 ページ32

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「柳生じゃないか。」
「どうも。テスト勉強ですか？」
「あぁ。お前は本を借りに来たのか？」
「えぇ。丁度柳君から薦められた本を読み終えたので。…おや？」


見た事のある髪型に思わず凝視してしまった。彼はこの前廊下で助けてくれた紳士だ。以前どこかで見た事ある気がしたのは、たまに図書室の本を借りに来てくれてたのだと後から知った。彼が私の視線に気付き、思い出したような様子を見せる。


「貴女はこの間の！」
「その節はありがとうございました。」
「いえ、とんでもないです。」
「なんだ、知り合いか？」
「この間廊下で助けてもらった。」
「ほぅ」


まぁこんな事柳は興味ないと思うが。というか柳と紳士が知り合いだったのが驚き。こんなマンモス校で共通の知り合いがいるなんてどんな確率なんだ。この前のリレーのジャッカル君といい、柳は意外に顔が広いようだ。


「また会えたのも何かの縁でしょう。私は柳生比呂士と申します。貴女は？」
「八神A。図書委員です。」
「そうだったんですね。以前お会いした時、何処かで見た事がある気がしたんですよ。きっと図書室でお会いしてたんですね。」
「恐らく」
「以前何があったのか気になるところではあるが、八神は勉強をした方がいい。」
「はーい」


柳に促され、問題集に目を向ける。解いてる途中で柳生がやってきたので、今の問題のどこがどうなるのかわからなくなってしまった。左手で頬杖をつきながら考えていると、悩んでるのを察した柳生が私の隣にやって来た。


「どこでお悩みです？」
「ここ。途中まで解いたんだけど、ここから答えが出せない。」
「…あぁ、惜しいですね。柳君、ペンを借りても？」
「構わない。」


柳からペンを借りた柳生が私の隣の椅子に座る。座る前に「隣失礼しても？」と聞いてきたので頷いて答えた。本当に紳士だな。


「これは引っ掛かりやすい問題なんですよ。ここがこうなってしまうと答えが出なくなってしまいますので注意して下さい。」
「へぇ…頭良いんだね。」
「いえ。私より柳君の方が良いんですよ。」
「へぇ…」


確かにデータがどうのって言ってるくらいだから、いろんな情報を持ってる上に記憶力もあると思う。なんでこう頭の良い人が揃うんだ。私の頭の悪さが際立ってしまうじゃないか。不満そうな顔が出ていたのか、柳が少し笑ってまた勉強を教えてくれて、柳生は教室へ戻って行った。


(そんな拗ねた顔をするな)
(拗ねてないわ)

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