【庭球】平穏に過ごしたいだけ

災難続き ページ12

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あの後陸上部男子が粘りを見せ、A組が1位となりリレーの決着がついた。正直勝敗なんてどうでもいい。それより早く帰りたい。先生から簡単に成績発表をされ、そのまま授業は終わった。盛り上がりの割に結構あっさりとした終わり方にますます解せぬ気持ちになったがもうどうでもいい。4限目だったので次は昼休み、各々ゆっくり教室へ戻って行った。ちなみに着替えは男子は教室、女子は更衣室だ。私もだらだらとしたスピードで更衣室へと向かっていたら、後ろから近付く足音が聞こえた。


「お前は本当に興味深いな。」
「…柳」


後ろから柳が話しかけてくる。同じ体育をやったとは思えない涼しい顔をしているもんだから、本当に授業を受けたのか不思議なくらいだ。


「いた？さっきの授業。」
「あぁ。お前達のチームの前に走ったぞ。」
「全然知らない。」
「お前が見てなかっただけだろうな。」
「……」


ご名答。無言は肯定と取られたのか、柳は軽く笑いながら私に並ぶ。何故。


「足が速いのは昔からか？」
「うん。」
「初めてお前の走りを見た時から疑問に思っていたんだが、何か運動でもしていたのか？」
「特には。」
「そうか。まさか帰宅部の女子がジャッカルと並走するとは思わなかったからな。足が速いのはデータにあったが、あれ程とは思わなかった。」
「それはどうも。データ更新しといて下さい。」
「勿論だ。貴重なデータだからな。」


私と話して何が楽しいんだか、結局柳と更衣室の手前までご一緒してしまった。つか柳とジャッカル君知り合いなのか。意外。柳はグローバルな奴なんだなと適当な事を考えながら手早く着替えを済ませていった。



＊

「すまんなー八神。」
「…いいえ」
「顔がそう言ってないぞ。」


昼休みの図書当番の仕事を終えて教室に戻ろうとすると、ちょうど担任と鉢合わせ、次の授業で返却するノート運びの手伝いに駆り出された。ちなみに朝村木さんにプリントを運ぶのを任せたのもこの先生。朝村木さんと文句を言ったので、今度は自分も運んでいる。おかしい、暗に1人でやってくれと言った筈なのに。不機嫌な雰囲気が隠しきれていないらしく、先生は苦笑しながら褒美のジュースを約束してくれた。ラッキー。

私は気付かなかった。角を曲がろうとした所で曲がった先の廊下から男子生徒が猛スピードで走ってきていた事に。


ドンッ！


「う、わ……」
「八神！？」

「おっと！」


ガシッ！



(先生の声の直後)
(よろける私を支える腕が見えた)

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