Episode187 ページ38
出水side
五時間目が終わると、おれは任務だから早退するなんていう嘘を先生に告げて、学校を出た。あの人のことだから絶対今日は学校サボっているだろうと踏んで、向かったのは基地。
「……たちかーさん」
「いずみ」
太刀川隊の隊室。案の定、そこにその人はいた。高校生のくせに制服すら着ずに。ずかすが、とおれはその人の座るソファーの前まで歩いた。
「太刀川さん」
そして改まってそう呼ぶと、太刀川さんは「何だ？」と座ったままおれを見上げた。おれはぐっと拳を握る。
「……あのまま、あいつやめさせていーんすか」
ぴく、と太刀川さんの体が動いた気がした。いいわけないだろ、それは分かっている。だけど素直に言って欲しかった。カッコつけないで、本当はAにどうなってほしいのか、全部話してほしかった。
「……別に、やめたいなら勝手にやめればいいだろ」
訊いて、おれはガッと太刀川さんの胸ぐらを掴んでその人を立ち上がらせた。けれど驚くような素振りは見せず、まっすぐとおれの瞳を見つめていた。
「なんであんたが諦めてんですか！」
大きな声を上げた。しかし、ここで太刀川さんは驚きを顕にする。予想以上におれが取り乱していたからなのか、それともおれが怒っている部分が想像と違ったからなのか。
「あいつを助けられるのはあんただけなのに……あいつを連れ戻せるのは、太刀川さんだけなのに……」
ぐぐ、と太刀川さんの服を掴む手に力が入った。悔しいんだよ、おれは。こんなにもあいつに、Aにここにいて欲しいのに、おれの言葉には力がなく、きっとあいつには響かない。なのに、力を持ってるあんたがどうしてAを止めない？
「あいつを太刀川隊にしてやれるのは、太刀川さんだけなんすよ！」
おれは太刀川さんの胸ぐらから手を離した。言い終わると自然に視界が滲んできて、情けないなと自分を嫌う。おれは自分の気持ちが先行して、Aのためにどうしたらいいのかなんて冷静に考えることができない。おれがあいつを止めたいのは、おれのためだ。けれど太刀川さんなら、あいつのためになるような行動ができるのではないかって、頼りにしてしまう。
「ーーあいつを太刀川隊にしてやれるのは、おれだけ……か」
静かに太刀川さんが呟いて、おれはその人の顔を見上げた。するとぽん、と頭に感触がして、途端にわしゃわしゃと頭を撫でられた。
「わ、太刀川さん」
「ごめんな出水。……いや、ありがとな」
言って、太刀川さんは隊室をあとにした。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
