Episode178 ページ29
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防衛任務でベイルアウトした日から。
「亜桜、今日基地行かね？」
「あー……今日はいいや」
「……そ」
一週間だ。あれ以来一度も基地には行っていないし、出水や柚宇さんのラインは返していないし、学校で京介を見かけても避けてしまう。太刀川さんからの電話にも出ていない。米屋は、そんな私に何も訊いてこなかった。任務があった次の日、久しぶりの任務どうだった？と訊かれて、私は口ごもって。その時の米屋の顔は、絶対に何かに勘づいた顔だったのに。
「うわ、やべ忘れもんしたわ、先に降りてて」
「うん」
下校時間になって、しかし米屋が教室に忘れ物をしたらしくて。私は一人で先に靴箱に降りて、学校の門で待っておくことにした。
ひどい、雨だ。
傘を開いて校舎から出る。そして門に近づいて、そしたらビニール傘が見えた。中学生よりも大きい体。黒い学ラン。私はそれ以上前に進めなかった。不意に初めて太刀川さんがここに訪れたときのことを思い出す。あの時も、彼はこうやって正門で私を待っていた。
「ーー行くぞ」
バシッ、と腕を掴まれて、衝撃で傘をカタンと床に落とした。その人はそのまま容赦なく私の手を引いて歩き進んでいく。ああ、あの日はその傘に入れてくれたのに。
「ちょ、た、太刀川さん、まって、」
太刀川さんは訊いてくれなかった。
―――米屋side―――
気付いていた、あの日亜桜に任務で何かがあったことくらい。弾バカの様子が明らかにおかしいし、亜桜だって基地に近づこうとしないし。でも、オレはいつも通り訊けなかった。
「あれ米屋先輩。A先輩と一緒じゃないんすか」
「京介。あいつは先に下降りてる」
オレが教室に忘れ物したから、と加えると京介は納得した。そのまま流れで、京介と一緒に靴箱まで降りることになる。
「雨やべーなー」
京介を待つ靴箱の校舎の扉の前で、オレは傘を開いた。そしたら、少し先に見慣れた傘があって、それが門まで歩いていくのが見えて。
「お、亜さく……」
亜桜。そう名前を呼ぼうとした。そしたら
カタン
そいつの傘が地面に落ちて。
「米屋先ぱ……、あれは」
京介がオレのところに来て、同じようにオレの視線の先の光景を見つめた。そいつの、亜桜の傘が水たまりの上に落ちた後、そいつは腕を引かれて行ってしまう。その姿が見えなくなるまで、オレは二人のことを黙って見つめていた。
「太刀川さんーー」
京介が呟いた。「だろーな」とオレは加える。
「オレも見習わねーとな」
落とされた桜色の傘を拾った。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
