Episode176 ページ27
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「あれ、カゲ？」
あのままおれは亜桜ちゃんと鳩原ちゃんを置いて訓練室を出て、そしたら廊下でカゲに会った。おれを見るなりげっ……という効果音が似合いそうな顔をする。
「……あいつどこ居るか知んねーか」
「あいつ？」
「A」
その名前に思わず瞬きをした。
「ランク戦してやろーと思ったのに電話でねーんだよ」
カゲも亜桜ちゃんも好戦的だ。だからランク戦を頻繁にしたりする仲だったのだろうか。まあおれは知らないけれど。
「はは、カゲ、太刀川隊なら今任務でしょ？」
「あ？マジかよ」
防衛任務のシフトくらい見ときなよ、とおれは軽く笑った。『太刀川隊なら今任務でしょ』。半分嘘だ。確かに太刀川隊は任務の時間だが、亜桜ちゃんはベイルアウトしている。たまたま鳩原ちゃんと一緒にラウンジに行こうという話になったから隊室を出て、そしたら彼女に会ってしまって。その瞬間、ベイルアウトしたことも、何かがあってそうなったことも悟ってしまった。
「チッ、太刀川隊任務終わるの何時だよ」
「あー、任務終わっても今日は無理だと思うよ」
カゲが睨むようにおれを見た。本人はそんなつもりではないのだろうけれど、目つきが悪いから。
「というか……しばらく亜桜ちゃんとランク戦はできないかもね」
へら、と何故か笑った。おれが。
「……おい」
長い前髪の隙間から、鋭い目がおれを捉えていた。「何？」とおれはその目を見つめない。
「そのもやもやした感情俺に向けんのやめろ気味悪い」
「！」
そうだった、カゲはSE持ちだった。吐き気がするだとか何とか加えて、カゲは苦そうな顔をする。
「おれは、亜桜ちゃんにどうしてあげたらいいのかな」
亜桜ちゃんが何かを背中に抱えていることに勘づいてはいても、詮索したり力になろうと考えたりすることはなかった。でも、今回ばかりは気がかりである。今の彼女の状態を放っておく気にはなれない。
『ごめんなさいあたし、人が、撃てなくて』
いつも気が弱くてなにかに怯えたようなあの子のように、なってしまうのではないかと思ったからなのか。自分では分からない。
「斬れなくなっちゃったんだよ、亜桜ちゃんは」
「……あいつが？」
撃てない“あの子”にも、おれは何もしてやれない。おれは斬れなくなった亜桜ちゃんに何かをしてやることで、あの子にも何かをしてやったような気になりたかったのだろうか。あの子に何も出来ない代わりに、亜桜ちゃんには何かを。
「……どーしちまったんだよ、Aのヤツ」
さあね、と答えるしかできなかった。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
