Episode172 ページ23
Aside
昨日学校に復帰したのに、今日は朝から任務で公欠だ。久しぶりの防衛任務だったが当日になってみれば特に緊張などはなく、警戒区域内を巡回している間もこれといって自分に異変がある様子も感じなかった。
『南西地区にゲート発生だって、向かえる?』
「了解了解」
本部南東地区あたりに辿り着いた頃、私たちのところに、柚宇さんからの通信が入る。太刀川さんがそれに返事をして、私たちは地面を蹴った。
「旋空弧月!」
到着するなりいきなりネイバーに攻撃し始める太刀川さんと、それをとりあえず援護する出水。あの二人がすぐに戦闘態勢に入ってしまうのはいつものことで、というかいつもは逆に私と太刀川さんが突撃してしまう側である。復帰したばかりなので今日は少し後ろから、私と京介が戦闘態勢に入った。
「太刀川隊現着、処理を開始しました」
状況的に仕方が無いので、私が本部に連絡を入れる。
『ゲート発生、ゲート発生』
「なんだ?多いな」
太刀川さんが斬ったネイバーが倒れると、また新たにゲートが開いた。多いなだなんて呟きながら口角が上がっている己のチームの隊長はやはり好戦的な人格なのだろうと再確認し、そしてその人に今日までついてきた自分もその類の人間なのだと、まるで今思い出したように……不自然なほど客観的に考えていた。
「そっちのネイバー頼んだぞ」
「了解っす、先輩いきますよ」
開いたゲートから三匹のネイバーが現れて、太刀川さんが二体を相手しているうちに、一匹がこちらに漏れてきた。彼がそいつを私と京介に托したので、私は弧月に手をかける。いつも通りの、私が先陣を切って京介がサポートに回ってくれる体制だ。隣で京介が合図を待っている。
しかし、カタカタ、と手にかけた弧月が音を立てた。
「?おい……」
この時、私は初めて自分の異変に気付いた。ネイバーを見つめたまま一歩も動けなかったのである。それでもネイバーは容赦なく私の方へ走ってきて。
「……ハァ、………ハァ」
ああ、やばい、私
「先輩……?」
殺れないーーーー
『あぶな………ッ!』
つんざくような柚宇さんの声が、インカムから訊こえた。
ザクッ
「………!」
ぎゅっ、とざくっ、を一緒に感じた。でも気付いた頃には私の体からもそいつの体からもトリオンが漏出していた。ピキピキと自分のトリオン体が音を立てて壊れていくのがわかる。バク、バク、とあるはずのない心臓がうるさい、指先が冷えて感覚が無い。
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います!!すごく嬉しいです……!こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました! (2022年5月29日 1時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして!作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます! (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます!お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります!見落としておりました;;なおしてきます! (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、(親友)の場所が(旧友)になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください! (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは!つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております! (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2019年2月10日 13時