Episode134 桜隠し ページ35
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降り立ったそこは、間違いなく別世界で。風景も吹く風の嗅いも、今まで感じたことの無いもののような気がして、しかし同じように人間が住んでいる世界で。
「大雨だな」
ただ、ザアアアと降り注ぐ雨だけがこちらの世界と変わらない音だった。どうやら戦争中という様子は無いので、このまま全員で先に進むことになるのか。
「おー、あれか」
低い崖の上。行き止まりで、その下に広がる国を見た。特別大きくも小さくもない国。やはり戦争中ではない。トリオン体なので、このくらいの高さの崖なら飛び降りられるな。
「人が、住んでる……」
「まあ近界民ってだけで、普通に俺らみたいに生活してるからな、あいつらも」
肉眼では見えないが、SEで国の中の様子が視えた。家があって人がいて。私の中のネイバーは、トリオン兵と呼ばれるあの化け物。こんな風に人間のネイバーがいるだなんて、新鮮なのだ。すごく。私の知らない世界が広がっていく感覚がした。
「もう降りちゃいます?見た感じ戦争中ではなさそーですし」
出水が口を開いて、太刀川さんはそれに頷いた。二人が前に進んで、私は周囲に敵がいないか確認するためもう一度SEを使う。
その、時だった。
「ッみんな!」
視えたから、私は叫んだのだ。要件を伝える前に背後から気配がして、私は咄嗟に弧月を抜いた。カキンッ!と刃がぶつかる音が鳴り響いて、あまりの出来事にその場にいる人間の視線こちらへ集まる。
「ーーは、」
「A!」
SEを使ったとき、私は数メートル背後から敵が来るのを視た。それはものすごいスピードで迫っていて、危機を伝えるため私はみんなを呼んだ。しかしすぐに背後から敵に斬りかかられて、太刀を受けた勢いで私は崖から落ちた。落下しながら、受け入れられない状況にただただ頭が混乱する。
「っこちら太刀川、人型と交戦開始」
太刀川さんが遠征艇に無線を入れるのが訊こえた。一瞬見えたのは、私を襲った奴以外の人型ネイバーが二人、太刀川さんたちに襲いかかる様子だった。そのまますぐにその光景も見えなくなって、まっすぐに私は崖の下へ落ちていく。
「へー、これが玄界の兵士?」
地面に、背中から着地した。ビチャっと水溜りの雨水が飛び散る。すぐに私を落とした敵がブレードを振りかざして来たので咄嗟にその姿勢のまま弧月で受け止める。そいつは私の上に覆い被さって笑った。
『A!』
通信機から太刀川さんの声がして、しかしそれは遠いどこかでしか訊こえない。
だって、
「……嘘、でしょ?」
「久しぶり、A」
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亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(;▽;)更新頑張ります! (2019年1月21日 19時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる!!!面白すぎてヤバイです!!更新頑張ってください!応援してます!!!! (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO,loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(;ω;) できる限り定期的に更新していきたいと思います! (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ! いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ! これからも頑張ってください!( v^-゜)♪更新お待ちしています! 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます!!( ;∀;)がんばります!! (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年10月8日 12時