Episode125 ページ26
米屋side
それはただのお泊り会だった。全然特別なことはなくて、夜中まで喋り倒していた。
「てかさ寝ないの?」
午前二時。亜桜が目を擦りながらそう言う。こんな風に泊まりをして平和に過ごす、普通の中学生で有り続けられた未来もあったのかな。となんとなく思った。
「オールでもいいけどな」
普通、すぎたんだ。だからオレもこいつらも錯覚していて、何か変化が起こる予感はあれども、そんな遠征すらも普通に来て普通に過ぎていく何かのイベントのように感じていた。その大きさに気付かずに。
「オレ明日任務なんだよなー」
「それは寝なきゃじゃん」
オレの発言に、「じゃあ寝るか」と弾バカも賛成して、そいつは別の部屋から三枚毛布を持ってきた。亜桜は嬉しそうに両手を広げてそれを受け取る。
「ん?お前部屋で寝ねーの?」
「どうせだからこっちで寝るわ」
「出水いいやつー」
一番大きいソファーを占領する亜桜、それより小さいサイズのソファーで寝る弾バカ、そしておれは必然的に床暖カーペットの上。どこでも寝られるため別に良いが、不平等である。
「ふあ、じゃおやすみ」
「おー」
「おやすみ」
亜桜があくびをしながらソファーに寝転んだ。それにオレも短く返して、弾バカも目を閉じた。
.
なんとなく、目が覚めた。薄く目を開けると弾バカが寝息を立てているのが見える。が、一番大きいソファーに人がいない。
「亜桜……?」
オレは上半身を起こした。するとベランダに人影があって、そちらに目をやる。長く伸びた茶髪が風になびいていた。もう十一月だぞ、寒いだろ。
「中入れよ、風邪ひくぞ」
「米屋」
オレはベランダの窓を開けてそいつに声をかけた。そいつが短くオレの名前を呼んで、言われた通り中に入ってくる。「おー寒」と呟いて、オレは窓を閉めた。亜桜の様子が何となくおかしいことには気づいていて、一体何を思ってこんな夜中に寒空の下に突っ立っていたのかと考えを巡らせた。
「ずっと起きてたのか?」
オレがそう問うと、亜桜は元々いたソファーには座らず、それに背中を預けるようにして床に座り込んだ。スマホの画面をつけて、眩しそうに目を細める。
「んー、まあね」
スマホの画面は四時を示していた。一番眠そうにしていたくせに、寝ていなかったのか。オレは亜桜の隣に座り、同じようにソファーに背中を預けた。
「Aちゃん寝れなかったの?」
「うるさいな」
何を、考えていたのだろうか。オレたちが眠っている間に、こいつは何を。
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亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(;▽;)更新頑張ります! (2019年1月21日 19時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる!!!面白すぎてヤバイです!!更新頑張ってください!応援してます!!!! (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO,loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(;ω;) できる限り定期的に更新していきたいと思います! (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ! いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ! これからも頑張ってください!( v^-゜)♪更新お待ちしています! 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます!!( ;∀;)がんばります!! (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年10月8日 12時