Episode113 桜は七日 ページ14
迅side
遠征を来月に控えた十一月のある日。ソロ隊員は他の隊との連携をできるだけ密にしなければならないため、合同で訓練を行うことがあって。今は、まさにその最中であった。
「迅さん、さっきのシーンどう思いますか?」
今日は、太刀川隊との訓練。Aちゃんがおれの方を見上げて問うてくる。
「うーん、おれとAちゃんが組むときは、おれが援護に回ったほうが良いかもな」
彼女と話すと、ぱち、と嫌な未来が過る。「あー、やっぱりですか」と彼女は自分もそう感じていたと言うような声色で賛同してくれた。
「援護のセンスねーもんなお前」
「うるさい出水」
一年ほど前の寒い日に、おれは彼女の未来を視た。よほど確定した未来だったのか、その時からは少し先の話なのに、はっきりと視えた。未来はいつでも分岐しているのに、彼女の未来はどう分岐しても『あの結末』に辿り着いてしまっていた。防ぐ方法は一つだけ。……それはAちゃんを遠征に行かせないこと。そうすれば、彼女をあの未来から救うことができる。だけど、おれは太刀川が遠征部隊に選ばれるのを阻止しなかった。その選択肢を、選ばなかった。
「まあまあ、Aちゃんは突撃型だから」
「典型的っすもんね」
「迅さん京介?二人まで?」
何故かって?
「ごめん、ちょっとこの後用事あるから、もう抜けるよ」
「なんだ、早いな」
「お疲れ様っす」
おれが言うと、太刀川さん、京介が口々にそういって、フィールド外にいる国近ちゃんも『お疲れ様でーす』と通信を入れてくれた。
「迅さん、また明日よろしくお願いします!」
Aちゃんが、飾らない笑顔をおれに向けてそう言う。おれは「またな」と彼女の頭を撫でて、訓練室をあとにした。おれはひどいやつだな、と思うのはもう何回目か。いつだっておれは『より良い未来』を選んできた。それはもちろん誰かにとっては悪い未来で、辛い思いをする人だって出てくるわけで。その度に、おれは誰かを傷つけて。
今回だってその一例だ。
Aちゃんの未来を遠征に導くことは、ボーダーにとって『より良い未来』で、だが"今の"Aちゃんにとっては悪い未来で。それでも、あとできっと『より良い未来』になるから。だからおれは、"今の"Aちゃんを傷付けることになったとしても、この未来を選ぶ。今はAちゃんを追い込むことになったとしても、いつか笑える日がくるから。
だけどその日が来た時は、おれのことを恨んでもいいよ。
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亜桜(プロフ) - 緋色さん» ありがとうございます(;▽;)更新頑張ります! (2019年1月21日 19時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
緋色 - 続きが気になりすぎる!!!面白すぎてヤバイです!!更新頑張ってください!応援してます!!!! (2019年1月20日 21時) (レス) id: 076cc2dab4 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - twice MOMO,loveさん» 長編にも関わらず全て読んでいただけて本当に嬉しいです(;ω;) できる限り定期的に更新していきたいと思います! (2018年12月11日 11時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
twice MOMO,love - とても面白いですっ! いっきにすべてのお話し読みおわってしまいましたッ! これからも頑張ってください!( v^-゜)♪更新お待ちしています! 長文ひつれいしました (2018年12月10日 17時) (レス) id: cfa0ae033f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - アヤカさん» ありがとうございます!!( ;∀;)がんばります!! (2018年11月25日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年10月8日 12時