モノクロノイズ。２【ワートリ】

Episode084 CONNECTION ページ35

出水side



『米屋にランク戦勝った』


下校中にそのラインを見て、チッと舌打ちをする。くそ、おれだって早く戦りたいのに。あいつらの学校の方が先に中間終わるとかマジでありえねー……


「あ！出水先輩！」
「ん？あー佐鳥か」


後ろから駆けてくる後輩がいて、おれは振り返った。そいつは同じ学校であり、ボーダーの後輩である佐鳥賢。


「あれ出水先輩スマホ？だめじゃないですか！」
「うるせーAに言え」


おれに悪い癖をつけさせたのはAだ、と思っての発言だったが、佐鳥がAのことを知っているはずもなく、しまったと心の中で声を上げた。案の定佐鳥は「誰？」と首を傾げる。


「あー……ほらウチの隊の亜桜だよ」
「あ、亜桜さん！？あの人学校にスマホ持っていってるんですか！？」


しかし亜桜と言うとピンと来たようで、佐鳥は大声を上げた。『太刀川隊の亜桜』という単語がボーダー内で有名になりつつある部分もあるので、佐鳥も認知していたのだろうか。


「普通に授業中に触ってんぞ」


そう言いながらおれはAとのラインの画面を佐鳥に見せた。おれは休み時間しか触らないようにしているというのに、あいつは時間なんてお構いなしだ。


「あれ？この人出水先輩と同期？」
「そーだけど」
「えええマジか！年上だとは思わなかった！」


佐鳥の発言を訊いてぶはっと吹き出した。Aは割と童顔なので、佐鳥が勘違いしても無理はない。「じゃあ亜桜先輩じゃん」と佐鳥が呟いた。


「ってか、亜桜先輩ラインは割と冷たいんですねー」
「まあそうかもな」


顔文字とか大量に使いそうなのに、という佐鳥の呟きを訊いて、そうか？とおれは訊い返した。あいつの口調は女子の割にサバサバしているし、顔文字というイメージはあまりない。……あれ、もしかして佐鳥、騙されてる？


「あの〜佐鳥くん？Aとどういう関係？」
「えっいやいや！その、ちょっと見た目が好みで……柔らかい口調とか照れ笑いとか、か、可愛いですよね！」


佐鳥は顔を赤くしてそう言うので、これは完全に猫を被った状態のアイツに騙されているのだと分かってしまった。柔らかい口調？アイツ「死ね」とか「黙れ」とかが口癖なほどトゲトゲしている女だ。照れ笑い？口を大きく開けて大爆笑するような奴が？


「んーまあその……早く仲良くなったほうがいいと思う」
「い、出水先輩取り持ってくれます……？」


騙されたままではあまりにも後輩が可哀相で、というか化けの皮が剥がれたあいつに失望する佐鳥が見てみたくて、おれはその提案に乗ることにしたのであった。

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