Episode082 ページ33
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ああこれ夢か。始まった途端にそれと分かるのは、結構珍しいことだと思う。途中で気付くパターンは多いけれど。私は早く覚めることを祈りながら、この状況に付き合うことにした。そういえばこの夢を見るのは、久しぶりな気がする。一年のときは頻繁に見ていた夢だったが、二年生に上がるといつの間にか見なくなっていた。
『A』
『……奈那』
「私を置いてそんなに大きくなったんだ」
は?と私は声を出した。自分の体に目を向けてみると、それは現在の、中学の制服を着ていて。いつもこの夢で背負っているランドセルも無くて、紛れもなく、今の私だ。
『な、』
ふと親友に目をやると、恐ろしい形相で私のことを睨むそいつがいた。
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「……置いていったの、そっちじゃん」
起きて、私はぽろぽろ涙を流していた。上半身を起こしながらそれを手で拭って、はあとため息をついた。
「亜桜?」
声をかけてきた人物にハッと我に返って、今の状況を理解する。しまった、最悪だ。
「ごめん……変な夢見ただけ」
そこにいるのは米屋だ。私は米屋の家でテスト勉強をしていて、疲れて眠ってしまった。床で眠っていたらしくて、起きたらこの有様なのである。
「ん、そっか」
米屋はそれだけ言ってぽんぽんと私の頭を撫でた。米屋の訊かない優しさに、今まで何回救われただろうか。情けない。
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「三輪じゃん」
「亜桜か」
あのあと夜になって基地に行くと、三輪に会った。テスト期間は基地には来ないタイプだと思っていたが。
「ねー三輪って夢にお姉さん出てきたことある?」
「あるな」
「やっぱり?」
以前までは、三輪にお姉さんのことを訊くのは抵抗があったが、話しているうちにそれも無くなってきて。今では三輪も嫌がったりせず、普通に返してくるようになった。
「ただ回想みたいな夢ならいーんだけどさ、変なこと言われるとかあってさ」
記憶を辿るだけの夢ならいい。でもあいつの顔をして、ひどいことを言うのはやめてほしい。
「……そういう時は普通に落ち込めばいい」
「気にしない方法とかないの」
「ない」
だよね、と私はため息をついた。多分三輪はああいう夢を見た日は素直に沈んでいるんだのだろう。無理に元気になろうとするタイプではない。
「お姉さん、夢で何て言うの」
「『何で助けてくれなかった』」
私は三輪を見上げた。それってかなりきついよな、と思いながら何も言えなくて。
「私は三輪が爆笑してるとこが見たいよー」
「はぁ?」
お姉さんも、絶対それを望んでいるから。
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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時