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Episode076 ページ27

太刀川side



隊室のドアが開く。部屋には既に俺を含めた三人が揃っていて、ドアを開けた本人は気まずそうに目をそらした。


「えっと……迅さんに負けたので、これからも太刀川隊としてよろしくおねがいします」


そいつがそう言った途端に抱き付きにいく国近、笑いを堪えられない出水、ソファーに座ったままの俺。アットホームなこの雰囲気が、太刀川隊というチームを象徴していた。


「なんか太刀川さんリアクション薄いね?」


Aの「苦しい……」という声を無視した国近が、ぎゅううとそいつを抱きしめながら振り返って問うてくる。


「そうか?まあこいつが負けるのは分かってたからな」
「ひどくないですか!」
「迅が予知してたんだから仕方ないだろ」
「は、え、太刀川さん迅さんの予知訊いてたんですか」


俺が言うとAが国近の腕を振りほどいてこちらに歩み寄ってきて、更に質問に対して俺が頷くと、Aはわなわなという効果音が似合いそうなリアクションをしてみせた。


「それいつ」
「お前に風刃の話が来るちょっと前だ」
「はぁあ!?」


Aは側にあったテーブルにガタンと手をついた。でもそのまま「だから挑戦するって言っても出水みたいなこと言ってくれなかったのか……」と一人で納得して、今度はその手を自分の額に当てた。「おい黙れ」と出水は怒る。この二人、何かあったのか?


「てか、私が負けるの知ってたなら何で挑戦させたんですか?」
「そりゃ経験になるからだろ」


さも当たり前のようにそう言うと、Aがため息をついた。


「あ、そういや迅がランク戦出来なくなったから、これからお前が相手しろよ」
「は、嫌です」
「なんでだよ」


Aのガードは迅より硬い。迅は嫌がりながらも結局付き合ってくれるが、こいつは何か気を引く餌がないと付き合ってくれない。その理由は多分、こいつが俺には勝てないと思ってるからだ。


「せっかくマスター上がったのに、太刀川さんと戦ったらポイント減っちゃうじゃん」


迅と俺はハッキリ言って同レベルで、ランク戦をしても勝ったり負けたりの繰り返しだった。けれどAは、一度も俺にトータルで勝ったことがない。結果的にポイントがごっそり減ることになるので、引き受けてくれないのだろう。俺からすれば、こいつの戦るのは色々な発見があって楽しいのだが。


「減ったらまた取り返せばいいだけの話だろ」
「私は太刀川さんみたいな変態じゃないんで無理です」


俺が「おい今なんつった」と睨むと、そいつは早足で向こうへ逃げていった。

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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時

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