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Episode062 ページ13

三輪side



自分がゆっくり呼吸を整えていくのが分かった。


「そういう、三輪に寄り添ってくれてる人たちをさ、傷つけちゃダメでしょ」


実は不思議に思っていた。亜桜は俺の世話を焼くほど俺と親しくないし、お互いまだよく知らないし、こんな風に俺を慰めてやる義理もないだろうから。なんで来たんだと、分からなかった。


「米屋、優しんだからさ。もうあんな顔させないでよ」


でもこの一言で納得がいった。こいつは俺を励ましに来たというより、陽介を励ましに来たのだ。俺の怒りの矛先が向けられてしまった陽介のことを思って来たのだ。


「もっと回りの優しさに気付いて」


『秀次はもっと回りの優しさに気付かなきゃ』


ふっと俺は肩の力が抜けた気がした。亜桜の言った言葉が、いつか姉さんに言われた言葉と重なって。ああそうか、もう姉さんが居なくなって一年が経ったのか。


「……すまない、亜桜」


.

 
ガコン、と自販機が鳴った。


「取り乱して悪かったな」


俺は淡々とそう告げて、缶のプルタブをプシュと開ける。それをゴクゴクと飲んで、ベンチに腰掛けた。


「明日ちゃんとあいつに礼言っとけよ」


陽介もジュースを買って、俺に向かい合うように立って壁にもたれた。今日はもう遅いので、あたりには誰もいない。


「……何故、亜桜は姉さんのことを知っていた」


亜桜はあのあと太刀川隊の隊室に帰った。そこでデータを収集してから、今日はそこに泊まるらしい。


「うーん……多分サイドエフェクトだな」
「サイドエフェクトだと?」


俺がそう問うと陽介はコクリと頷く。


「五感がちょっと人と違くてさ、色々あるんだけどお前の姉さんの件は多分視えたんだと思う。広範囲が視えるらしいからさ」


みられていた、のか?あの日、雨の中姉さんを抱きかかえて泣き崩れる俺も、血だらけになった姉さんも。


「一年前のお前視ちまったから、同情したんじゃねーの」
「……それは違うだろう」


陽介から訊いている亜桜の性格なら、それはあるかもしれない。いや、実際に少しあったのかもしれないが、さっき訓練室に来た理由はそこではない。


「お前のことを心配して来たんだ、亜桜は」


陽介も陽介で、優しい奴だということはよく知っている。訓練室に行こうと言った時も、こいつなら嫌がることなく俺のストレス発散に付き合ってくれるだろうと思ったから。ひどい言葉をぶつけても、こいつなら静かに訊いてくれると思ったから。


「それ、オレもあいつに礼言わなきゃじゃん」


今日、初めて陽介が笑った。

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亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時

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