モノクロノイズ。【ワートリ】

Episode037 ページ38

Aside



「転送位置ランダムだから、合流優先ね〜」
「とうとうこの日が来たな」


国近がパソコンの前に座って言う。トリオン体になっている俺たちは、全員立って訊いていた。転送まで三○秒。このチームで初のＢ級ランク戦が、開幕だ。マップは市街地Ｂ。


「国近、二人はどこだ？」


フィールドに入ると見える範囲には誰もいないので、レーダーで敵の位置を確認しながら通信機で国近に確認をとる。そして出水は近くの路地にいるらしいが、Aは少し距離のある民家の裏にいることが判明した。


「まず出水と合流するぞ」
「はいはーい、奇襲気をつけてね」


バッグワームを使って出水のいる方向へ走った。


.


転送位置が良くなかった。近くに敵がいる。バッグワームを起動するのが少し遅かったのでバレている可能性が濃厚。


「亜桜ちゃん、スナイパー探してくれる？」


柚宇さんにそう言われて、一息ついてから意識を集中させた。


「左の屋上駐車場と、近くのビル十二階」


自分で少しだけ制御できるようになったサイドエフェクトで視えたのは、二人の狙撃手。敵の隊が二つで各隊に一人ずつ狙撃手がいるから、これで全員だ。


「了解。助かった」
「把握把握。サンキューな」


回数を重ねるうちに、視覚だけ少しコントロールできるようになったのである。意識を研ぎ澄ませることで、視たいものを探して視られるようになった。


「メテオラ！」
「っすんません太刀川さん見つかりました、合流いけますか？」
「もうすぐだ」


すると通信機から、急に出水が攻撃を開始する声が訊こえた。爆風の音もする。あちらが先に交戦開始か。


「隊長！亜桜見つけました！」
「おわっ、見つかりましたー、亜桜交戦開始します」


と、呑気に二人の会話を訊いていると、私の方にも敵のアタッカーが背後から寄ってきた。いきなり斬りかかってきたため避けて跳ぶと、傷は負わなかった。弧月を抜き、足元にグラスホッパーを起動して一気に両足を斬る。敵は膝をついて左手に弾丸を出現させた。弾持ちだ。それを撃たせたら面倒だと判断して、私は真上に飛んでから一気に落下して心臓を貫いた。


『トリオン供給機関破損、ベイルアウト』


初仕事が完了。すると別の光景が見えて、チームメイトに通信を入れた。


「出水、狙撃手そっち狙ってる」
「オーケー、片付けるわ」
「ナイス」
「ありがとうございますだろ？」
「は？」


呑気に会話するな、と太刀川さんの声がして、私は裏の路地に回って合流を急いだ。

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