Episode030 色づき出す日々 ページ31
Aside
見覚えのある町並み。傷ひとつない住宅街。そこに私は、ひとりぽつんと立っていた。寒くもなくて、熱くもなくて、誰もいなくて、何も感じない。
『今日も学校楽しかったね』
ふと声がして隣を見ると、しばらく見ていない奴がいきなり隣に立っていた。赤みがかった髪、青い瞳。
『×××××……！？』
私は無意識に、名前を呼んでいて。背中に背負ってるのは、桜色のランドセル。あれ、どうして？私はもう中学生になったのに。あんたのいない世界で、やっとやりたいことを見つけたところなのに。
『……っ』
そいつのその顔が、優しく切なそうに歪んだ。
.
「っ！……はー……はー……」
ばっと、体が起き上がる。なんだ、もう朝か。最近、似たような夢をずっと見ている。授業中に寝た時も、屋上で寝た時も、家でベッドに入った時も。アイツが何か言うのに、その声にはノイズがかかってよく訊こえない。手を伸ばしても、触れることができない。夢を見ることで、忘れもしないあの日常を思い返した。平凡で、でも幸せで、そして最後は、唐突に訪れたのだ。
「着替えよ」
私はベッドから立ち上がって、クローゼットの前に立つ。パジャマを脱いで、制服に着替える。カーディガンを羽織って、私は部屋をあとにした。
.
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
ボフッとベッドの上に落ちる。私は「あーッ！」と声を上げて頭をかいた。
「ぶはっ、お前まじか！」
「防衛任務でベイルアウトはないわ」
まだ現地に残っている米屋と出水の声が、通信機から聞こえる。私は二人に向かって「うるさい」と流した。本当、何かあったらすぐ人のことをからかう連中なんだから。
.
「それはないな」
「うるさいです」
そしてそのあと、任務を済ませて基地に戻ってきた出水と二人でラウンジに行くと、そこで太刀川さんに遭遇。出水が防衛任務でのことを報告しやがった。
「いきなり突っ込んで切られるとかバカだろ」
「防衛任務、楽しみだったから……」
説明すると、今日は出水と米屋と組んで防衛任務に出た。だが私は初めての防衛任務で身勝手にネイバーに突っ込んだ結果、ベイルアウト。つまり無事Ｂ級昇格、正隊員になったわけ。
「とにかくお前、協調性覚えろ」
「ごめんなさいー！」
太刀川さんは結構真面目なトーンで私にそう言った。呆れるのも無理はないし、これから協調性が必要になってくることは私も重々承知だった。だって、もうすぐ太刀川さんと隊を組むことになっているのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 522人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます！固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜！ (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります！！ (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです！続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます！！わがままな作者で申し訳ないです（汗）必ず戻ってきます…！ (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜桜 | 作成日時：2015年8月5日 16時
