Episode026 ページ27
Aside
「何か一言くらい言ってくれても良かったのに」
「そもそも俺が隊作るんだから別にいいだろ」
「はいはいその通りです」
私が不満気にそう言うと、目の前に座る太刀川さんは、そこまで気が回らなかった、と謝罪の意のカケラもなさそうに返事をした。その日の訓練を終えて、私は太刀川さんと二人でファミレスに来ている。晩ご飯を済ませてしまう予定だ。
「で?本題は?」
「あっ出しますね」
太刀川さんにそう言われて、私は自分の鞄の中に手を伸ばす。それを取り出して、「どうぞ」と太刀川さんの方に向けて机に置いた。それとは、サイドエフェクトの診断書のこと。
患者名……亜桜A
【診断結果】サイドエフェクト……特殊五感
詳細……一般より視覚、聴覚が七〜八倍、嗅覚三倍、触覚、味覚マイナス六〜七倍、なお過度な使用により数値の変化あり
それぞれの効果について
視覚→半径二キロ以内の光景を断片的に視る
聴覚→半径二キロ以内の人の声を聴く
嗅覚→半径五百メートル以内の嗅いが分かる
味覚→一部の味しか感じられない
触覚→熱さ、冷たさ、痛覚などが鈍い
その他……使用頻度によって、頭痛、体のだるさ、眠気、疲労などの症状出ることあり。また、長時間の使用は負担になるので控えること。
界境防衛機関ボーダー基地内医務室
紙に一通り目を通して、太刀川さんは「ふーん」と声を発した。
「思ってたよりえげつないもん持ってたんだな」
「私もびっくりでした」
しかし確かに、大規模侵攻のときに血の嗅いを感じたあれも、甘さや極端な苦さ、辛さくらいしか味がわからないのも、火傷しても気付かないのも、サイドエフェクトのせいだとしたら納得がいく。
「使用方法も分かんないし、扱いづらそうですね……」
私のサイドエフェクトはかなりいい素材なのかもしれないが、勝手に作用してしまうし規則も何もわからないから、この先ランク戦などで欲しいときに使えるかどうかの自信がない。使い過ぎに注意と言われてもコントロールできていないし、先行きは怪しいと言ったところだ。
「ん」
「わっ」
ぽん、と太刀川さんの手が私の頭に乗って、私はびっくりして声を上げた。思っていたよりもごつごつしていて、大きな手のひらだった。暖かくて、安心する。
「そのうち慣れてくるから、そんな不安そうな顔すんな」
「……ありがとうございます」
わしゃわしゃと太刀川さんが頭を撫でてきて、私は「髪ボサボサになるじゃないですか」と嫌がるフリをした。優しい人だ、本当に。
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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時