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Episode016 桜は花に顕れる ページ17

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ゴクッゴクッゴクッ
自販機で買ったジュースを、ゆっくり飲む。缶から口を離して一息つくと、訊き覚えのある声が後ろから私の名前を呼んだ。


「亜桜」
「?」


私はその声に振り返り姿を確認すると、その人物に大きく目を見開いた。


「太刀川さん!?」
「無事入隊できたみたいだな」
「居たなら早く言って下さいよ!」


親を説得してもらった日以来会っていなかったその人は、缶を両手で持ったままため息をついて、悪い悪い、と謝罪の意思がなさそうな声色で謝った。


「戦闘訓練見てたぞ。さすがだな」


どーも……と私が空返事をすると、太刀川さんは小さく笑って目の前にある自販機でジュースのボタンを押した。


入隊試験を受けてから約半月後である今日。


私は正式入隊日を終えた。米屋と、あと、試験会場で出会った出水公平と一緒に。つまり、無事に合格してこの場に立っているわけ。私はアタッカー志望だったので、いきなり戦闘訓練があった。


ボーダーには戦うポジションがあって、


アタッカー、ガンナー、シューター、スナイパーと言うらしい。近、中距離志望の戦闘員には戦闘訓練があり、仮想戦闘モードという設定の部屋の中でネイバーと戦った。何分で倒せるかで素質を見極めるらしい。内容は緊張しすぎてあまり覚えていないけれど、初めて敵を斬ってすごくワクワクしたことだけは覚えている。


「七秒とか大したもんだろ」
「出水に負けたんです……!」


試験の合格発表のときは彼とは会わなくて、この正式入隊日で再会した。そしてアイツは私よりも早いタイムで、例の戦闘訓練を終えた。ちなみに米屋には勝った。


「出水?あーシューターのか」


出水はネイバーと戦うときに消費する『トリオン』という物質の量が多いらしくて、彼のポジションはシューターという射撃を主に担当する役割りなのだが、そのセンスも高いらしい。早くも天才と注目されていた。


「……太刀川さん、ほんとありがとうございます」
「なんだよ?いきなり改まって」
「私が入隊できたのは太刀川さんのおかげですから」


私はジュースを飲み干して、ゴミ箱に捨てる。そして、太刀川さんのほうに笑顔を向けた。太刀川さんはしばらく黙って、買ったジュースを飲み干す。


「俺は別に、自分の為にやったまでだけどな」
「自分の為?」


そうだ、と太刀川さんはその場にあったベンチに座った。自分のために、私をボーダーに勧誘した?しかも、親の説得まで。足りない頭を必死に働かせても、その言葉の意味はわからなかった。

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亜桜(プロフ) - 百瀬さん» ご指摘ありがとうございます!固定夢主の名前を変換しそこねていたようで……大変失礼しました;;気付いたところから修正していきます。 (2023年1月5日 0時) (レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
百瀬 - 途中途中で名前が"紗雪"になってますよ〜! (2023年1月3日 12時) (レス) @page47 id: 6aa4d6dc2c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 柊那さん» ありがとうございます(´;ω;`)修正多めのマイペース更新で申し訳ないですが頑張ります!! (2018年5月18日 13時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
柊那 - 面白かったです!続き楽しみてしてます。更新頑張ってください( -`ω-)b (2018年5月18日 2時) (レス) id: 6886eff87c (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 藤見日和さん» わざわざ有り難うございます!!わがままな作者で申し訳ないです(汗)必ず戻ってきます…! (2016年11月24日 20時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜桜 | 作成日時:2015年8月5日 16時

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