【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ7)

今日:81 hit、昨日:83 hit、合計:70,693 hit

　┗　3 ページ7

.

nk「あ」

『あ、……』

疲れ果てて喉も乾いてて。かと言ってカフェに入る気力もなく。Nakamuは担当者と別れたあと、エレベーターホールをさらに進んだ所にある自販機に立ち寄った。

そこで、小さいサイズのお茶を2本手にしたAとばったり会う。

nk「え、っと、……ひ、久しぶり」

『……今日は2回も会ってるけど』

nk「いやそうだけど、今なら普通に話せるかなって」

『……うん、まあ』

休憩スペースの無い自販機は人気がなく、オフィスからも離れていて、人目はない。どこか隔絶された穴場ともいえる場所で、Aはやっと堅苦しい態度を崩す。

『……元気そうでよかった』

nk「Aも相変わらずそうだね」

『まあ、そうだね。忙しくて何も変わってないかも』

nk「ふーん、……彼氏とか、いないの？」

『……いない、けど』

nk「そっか」

つい安堵から笑顔になれば、Aはバカにされたとでも思ったのか「ムッ」と顔を顰める。

nk「あ！いや、バカにしてるとかじゃなくて！」

『ふーん』

nk「……Aが、……まだ誰のものにもなってなくて、安心したって、いうか」

『……』

nk「あのさ、良かったら今度───」

『ごめん』

Nakamuが言葉を言い終わる前に、Aは先に謝った。

そうだよね、望みなんて、あるわけないのに。
自嘲気味にNakamuはぎこちなく笑い返す。

nk「デスヨネ〜、……いや、わかってたよ」

『まあ、普通の恋愛とかもう難しくて大変なんだろうけどさ、それも含めてNakamuの選んだ道じゃん。なんていうか、頑張って』

nk「待って久々なのにどギツい事言うじゃん」

『まあ、振られたのは私だし』

そう笑うAを、出来る事なら抱きしめて許しを請いたかった。でもここは、2人きりとは言えオフィスビルの中。同じフロアにAの勤めてる会社があって、俺はそこのクライアントで。

大人になんかなりたくなかった。そのせいでいま、好きな人に何もできないのだから。

nk「でも今は俺がフラれたから、これでおあいこじゃね？」

『……そうだね、そうしよっか』

そう言ってAは2本あるうちの1本のお茶をNakamuに投げ渡した。

『お茶、飲みきってたでしょ。あの人無駄話長いから、まだ会議室に閉じ込められてたら持ってこうと思って』

nk「え、ありがとう」