【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ46)

今日:1 hit、昨日:15 hit、合計:70,530 hit

◇ Need that magic. (all) ページ46

.

誕生日はいつだって待ち遠しかった。
シャンパンを開けて、友達とパーティしたり、クラブでDJに名前を呼ばれたり、彼氏と2人きりで過ごしたり。

だけどね、ひとつ年齢を重ね、大人になるにつれて、ひとつずつ“魔法”を失っていっている事に気が付いてしまったの。……それからだろうか。誕生日を、どこか憂鬱に感じるようになったのは。

メイクに時間を掛けなくなった。オシャレではなくマナーになったから。

クローゼットの服の色数が減った。トレンドを追うのがバカらしくなったから。

手の込んだ料理をしなくなった。食べてくれる人がいないから。

夢を追わなくなった。何度も振り返る夢を諦める事があんなにも怖かったのに。

……恋をしなくなった。

失恋するたび痛みをお酒で飲み干してたから、酔っ払ったついでに誰かにときめく気持ちをクラッチバッグと一緒にどこかのバーカウンターに忘れてきたみたい。

──────────
　Need that magic.
──────────

最後に彼氏がいたのは1年くらい前。顔が良くて体の相性も抜群の、性格クソみたいな男。
その反動で誠実そうな男に恋をしたけど、「僕で遊んで反応を楽しんでるんでしょ」って嫌われた。周りから容姿の悪い童貞と言われるあなたでも、私はそれがとてもチャーミングに思えて好きだったのに。

それから恋はしていない。
魅力のある男に出会っても、心がセーブするようになったから。体力も無いし、疲れちゃったんだと思う。
大学に居るうちに彼氏作っておきたかったけど、たぶん同じ大学内では無理。同じ学部ではもっと無理。私が誰と付き合ってどんな恋愛遍歴をしたかみんな知っているし、それは私もそう。目の前の男がなんて名前の女の子と付き合ってたか知ってるし、どういう別れ方をしたかも知ってる。

だから、もう空気には流されない。

br「ね〜〜〜いいじゃん、デートじゃないから！ね？ね？」

『あのねぇ……』

銀杏並木の脇道に逸れたベンチに座って過ごすランチタイム。
目の前で小学生みたいに駄々をこねているのは2メートル近い高身長のBroooock。膝にお弁当を乗せた状態で彼を見上げるのはなかなかに首が痛い。

しかし首の痛みなどかわいいもので。どちらかと言うと状況からくる頭の痛みの方が大きかった。