【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ35)

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『私が悪いの。中間考査で勉強漬けだったし、それに彼氏はもう働いてるから、……学生で遊んでるお前とは、ストレスが違うんだだって、……』

泣くのを我慢しても、Aの目からはぽろぽろと涙が落ちる。
見てて痛々しいくらい傷付いていても、Aは絶対に彼氏の事を悪く言わない。Aを傷付けたのは、その彼氏なのに。

てか、なんで別れないの？
浮気だよ浮気。Aを裏切ったんだよ、ソイツ。

……なんて本音をAに言えば、Aは俺の事までシャットアウトするだろう。だから俺はあえて、Aの味方でいる事を選んだ。

kr「そっか、……でもさ、Aは我慢して偉いね」

学部の友達もサークル仲間もみんなAに「彼氏と別れろ」ってアドバイスして、Aは俺以外のヤツに恋愛相談をしなくなった。
もちろん俺にとっては好都合で。あとはどうやって別れさせてどうやって落とすかってだけ。

言うて別れるのは時間の問題だろうけどね。

kr「俺Aのこと、いつも周りに気遣いできる子だなって思ってたけどさ、彼氏には人一倍気を遣ってるよね。本当えらいよ。浮気されても別れたくないなんて、……Aは本当にその彼氏が好きなんだね」

『……う、ん』

ほら、「本当に好き」って、Aは即答できない。

kr「どんなに傷付いても許すなんて、普通できねぇから。……Aはそれでも許すくらい、今まで彼氏から大切にされたんだよね？」

『そうなの、中学の時にね───』

何回聞いたか分からない、中学時代のエピソード。A、俺は暗記できるくらい聞いてあげてるよ。でも、喋りながらAも気付いてんじゃないかな。

kr「そっかぁ、……今年になってからはどうだったの？」

『えっ、今年……？あ、……えっと、……ほら、地元と距離あって、会えなかったから……！』

ほら、詰まった。
……A、気付いて。付き合ってからは彼氏に大事にされてないんでしょ？それって、Aがあんな男のいいようにされてるだけなんだわ。

『……ッ、わたし、……本当は、愛されてないの、かな』

俺なら愛してあげるよ。

kr「そんな事ないって。彼氏と両想いでなきゃ、Aに別れたくない理由なんてないわけじゃん」