【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ28)

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人を大事にできない人は、そもそも自分を大事にできない人なんだと思った。

シャークんは、そういう人。
大好きで、とても愛しているはずなのに。付き合って、順調に同棲まで始めて。私とシャークんが一緒にいるのが当たり前になるにつれ、……シャークんは、私を拒絶するようになっていった。

2LDKのマンションに24時間一緒にいれば、何だって目につくのは当たり前で。

私は色々なことを「家族になるための成長痛」だと思ってきた。

カッコよくないシャークんが好き。絶対に人には見せないだらしない顔とか、洗面台の前で身支度をする姿とか、洗濯物を入れたカゴの中身とかね。

私は愛ってそういうものだと思ってて。
コーヒーを2人分淹れたり、10個入りの卵のパックを気にせず買ったり、下処理のいる野菜も手間を惜しまず料理するようになったり。あとは、焦がしたホットケーキをキッチンで食べて証拠隠滅するとかね。

何気ない事でも、それが1人だったら絶対にしなかった事だと思った瞬間、それが全てシャークんが一緒に居るからだと思い知らされる。その日々が、私はたまらなく幸せ。

だけど、シャークんは違った。

喧嘩したわけでも、嫌いになったわけでもない。

ただ、私のせいでシャークんが居心地悪そうにしているのを見て、とても悲しくなってしまっただけ。

シャークんはあまり自分を大切にしない。
仕事を優先するし、忙しければ食事も睡眠も忘れる。
少しでも手が空けばひとの仕事のフォローに回って、目の下のクマが取れたところを、私は見たことがない。

「Aのこと放っててごめん、次の週末はお出かけしよ？」って、シャークんは毎週のように言う。

別に私はそんなことどうでもいいよ。だからお休みの日くらいのんびりしてて？

そう言えば、シャークんはいつも申し訳なさそうな顔をする。

「愛される資格なんて無い」、最初の頃はそんなような顔をするだけだった。でも次第に、シャークんは私に愛を与えられた分だけ、冷たく当たるようになっていった。

そうやって、私から逃げてるように見えた。