聴き逃してジェニー ページ25
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「師匠は何故合成弾にこだわりがあるんですか？」
蔵内の言葉に彼女は目を点にした。先程蔵内に奢ってもらった飲み物を無意識に力強く握っていたらしく、蔵内は慌てて謝ってきた。特に深い理由はないようだが気になったらしい。
蔵内との関係は良好だ。たまに合えば射手としての話やコツやらアドバイスやら、知的な蔵内との会話は彼女の疑問を直ぐに解決に導いてくれる。ただ師匠呼びしてくること以外では彼女は蔵内との会話はとても好きだった。
彼女はうーん、と唸るとポツリポツリ話し出した。
「私も誰にも真似出来ないような強い力が欲しかった、から」
「出水先輩は天才でセンスもいいから、ちょっと引け目感じてせめて出水先輩くらいはやく合成弾つくりたくってずっと訓練室に籠ってました」
「なるほど」
「それでやってるうちに効率的な作り方を編み出してきて、ようやく出水先輩と同じ土俵？に来たかなって感じですよ。出水先輩はノリで作るみたいだけど私そこまでのセンスないからめっちゃ苦労しましたし」
出水は才能ある優秀な射手だ。ノリで合成弾を作った、というだけあって難しいと言われるリアルタイムで軌道を引くことも、合成弾の制作も、お手の物だった。そんな出水のいる隊に入った当初の彼女は出水がいるだけで劣等感を感じ鬱になるほどで、今とは比べられないほどよく泣いていた。
未だに太刀川が何故自分を引き抜いたのかなんて分かっていない。太刀川も剣の腕が達者で、当時の同期の烏丸は何でもそつなくこなす優秀な人間だ。他の隊の人間も、その人にしかない特別な強さを持っているのを目の当たりにして彼女はよく訓練室で泣いていた。
「上手くいかなくてめっちゃ泣いたし、嫌になったし、出水先輩には八つ当たりもしたけど、今ようやく納得できたって言うか……結果オーライ？ですかね。めちゃくちゃ周りに迷惑かけましたけど」
「……師匠らしいですね」
その言葉を聞きそれまで静かに話してた彼女は、ぱっと顔を上げ蔵内を見て笑った。
「ふふん、もう合成弾の扱いで私の右に出る人はいませんよ。だって私めちゃくちゃ今強いんで！」
「流石です師匠」
「師匠じゃないですけどもっと褒めてください！」
蔵内はこの人を師匠と呼んで間違いないのを確信すると最高の師匠ですよ、と笑った。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月26日 0時
