ニルヴァーナ ページ23
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時たまに彼女は酷い夢を見る。
それは彼女がまだ故郷にいて、まだ朝日が完全に昇るには早い時間。たくさん降り積もった雪が道路を塞ぐから、朝から除雪車がゆっくりと雪をかき分けてる音が聞こえて、リビングは素足でいるのが少し辛いほどに冷えていて、透明な空気が家全体を覆っている。なんてことの無い冬の朝、彼女は起き上がって、何か嫌な予感が胃の奥底からせり上がってくるのを感じるのだ。気分転換に外に出ると、暗く深い影が射すのだ。
そうしてそのどうしようもないその嫌な感覚は、突然のイレギュラーな門の開門と同時に消化されていく。いつかテレビの画面の奥で見た遠い場所のSFみたいな事実。近界民の襲撃が起きない平和な土地。そう思って過ごしてた彼女の想像を簡単に崩していく無慈悲な現実。早朝の早い時間、誰もが寝静まっている時間。
ただ彼女だけが生き延び、周りがなんの抵抗もなく死んでいく。住んでいた土地が荒れ果てる。何もできる力もない。ただ、己だけが生き延びてしまう。
怖かった。そうして無駄に生き延びた自分も許すことはなく、静かに押しつぶされて道ずれになるそのすんでのところで息苦しさから解放され目が覚めるのだ。
時計を見ると17時を過ぎたところ。ハァハァと荒い呼吸を繰り返し汗をかいたその額を拭う。学校が終わって帰宅して制服のまま寝てしまっていたようだ。震えが止まらなくて、涙が滲み出すと彼女は人一倍故郷を恋しく思う。置いてきた家族に触れたくてたまらなくなり、身を抱きしめると扉を叩く音がした。
「お師匠〜タコパしましょうよタコパ」
「小鍛冶おるか〜？」
「寮組でタコパするんやけどお師匠来ます〜？てかいます〜？」
「おまえ小鍛冶のこと強制する気マンマンやん」
「お師匠とご飯食べたいやないですか〜お師匠おるんレアなんすよ」
隠岐と水上の声だ。
彼女は急いで扉に向かった。ボサボサの髪の毛も、涙が出たままの顔も、まだ残る震えも無視してロックを外し扉を開けた。
「んぇ、お師匠だれに泣かされたんです？」
「おいおいどないしたん。なんか嫌なことされたんか？」
「お師匠ヨシヨシえらいえらい。もうタコパして嫌なこと忘れましょ」
「ホンマにちゃっかりしとるわ……」
涙を拭う隠岐に背中をさする水上。彼女は申し訳ない気持ちがふつふつと湧き上がるのを感じながら、また怖い夢を見ただけで良かったと、安心した。
「タコパする！！」
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月26日 0時
