齟齬ばかりで ページ16
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太刀川に負け戻ってきたヒュースは、太刀川の下に彼女がついているのかと改めて思い返した。
普段ヒュースが知る彼女は忙しくて落ち着きがない。大規模侵攻の時それなりに彼女の強さを実感してはいたが、玉狛で手合わせている時も慣れない武器でもヒュースの首を取る力はあるのだ。彼女は根からの脳筋。理論派ではない。そんな彼女から聞いた太刀川の話はちょっと頭脳戦もするけど基本直感で動く人、という事だったがちょっとどころではない。ヒュースの動きを読み切った動きだ。腕の立つ頭の回る男だとヒュースは太刀川を感心した。
玄界の進歩をひしひしと感じながらヒュースは時枝の話を聞く。
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「こいつかなり強いな。いきなり1本獲られた」
太刀川は嬉しそうな顔をして戻ってきた。彼女がフフン、と自慢げな顔になるのを見つけると「おまえんとき1本も取れなかったのにすげーぞ」とわしゃわしゃと撫で回した。
太刀川からの撫で回しから避難した彼女が自分も誰かと対戦しようかなと思っていたら、ブースからでてきたヒュースはそのまま彼女の元にやってきた。
たわいのない会話をする彼女とヒュースを遠目から見守る攻撃手の皆々が二人の関係性を探ろうとしていた時だった。
「A今日は来るのか」
「あ、今日泊まる」
「わかった。準備しておく」
聞こえてきた会話に3人の男の動きが固まった。生駒と笹森と辻は一斉にヒュースの顔を見つめる。
ヒュースは顔が良い。一応カナダ人設定で通しているだけあって目鼻立ちのはっきりとした色白の美青年に、ボーダー内でそれなりにファンがいる彼女は並んでいるとそれなりにお似合いで、彼女も出身が東北の雪国というだけあって色白で、2人が並ぶと絵になるのだ。
辻は軽い目眩を感じ、笹森は静かにショックを受けていた。生駒は顔を真っ青にさせてわなわなと震えている。
「ひゅ、ヒュースくんきみ小鍛冶ちゃんのコレなんか？」
「……？」
「無言は肯定と捉えてええやつなんか？！」
小指を立てる生駒にヒュースは首を傾げるばかりだ。
そばに居た太刀川は「できたなら言えよ」と彼女の頭を小突く。「全く違いますけど」という声は恋バナに盛り上がる男達の耳に届かず、三浦と巴だけが「お疲れ様です」と彼女に労いをかけていた。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月26日 0時
