凶悪な意味を孕む ページ15
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ヒュースと生駒、ほぼ互角の試合が行われ4対4になり観戦者は誰もが目を逸らせない展開になっていた。彼女も太刀川に引きずられてブースに来ていたことすら忘れるほどに試合に魅せられていた。
ここから先どちらが勝つか分からない緊張感の中、生駒はヒュースを隙を突き旋空弧月を放った。綺麗にハマった旋空はヒュースを体を断ち切り、ヒュースは生駒から放たれた旋空を、何があったのか分からないと言った顔をしてベイルアウトしていった。当の生駒は、つい反射で旋空を使用したようで、しまったと気づいた時には試合は終わっていて生駒の反則勝ちとなった。
「まことにもうしわけない。いつものクセでやってもうた」
戻ってきた生駒はベイルアウト用マットでお行儀よく座っていた。彼女は攻撃手ランキング6位の生駒相手に旋空まで使わせるヒュースに、改めて凄いなと感心する。
以前アフトクラトルにいた頃は幼い時から剣術をならっていたと聞いていたが、ここまでとは。ヒュースの元に行って褒めねば、とヒュースのいる部屋に向かおうとしたら「なんだなんだ？」と嬉々とした声がした。
太刀川だ。彼女はゲッ、と顔を顰めたのを太刀川は目ざとく見つけ、彼女を羽交い締めにして捕まえていた。
「おまえ逃げやがって。こんな楽しいとこにいたのか」
「いや知り合いがいて〜……」
「知り合い？」
「いま生駒さんとやってた人！」
その言葉を聞き、太刀川は彼女を捕まえてた手を離しヒュースに試合を挑んでいた。太刀川は元来誰とでも戦いを好む男だが、特に強者との戦いをより好んでいた。その被害者が迅だったりするが、大抵は断られたり逃げられたりで、太刀川はその憂さ晴らしに彼女を捕まえてはランク戦に赴いていた。
今日も例に漏れず、課題に飽きたからと廊下を歩いていた彼女を捕まえてやって来ていた。彼女が太刀川を尊敬していて、まず断ることが無いことを踏んで捕まえているのだからとんでもない確信犯である。
太刀川は新しく湧いてきた強者を値踏みする、というよりかは遊び相手を見つけたようでとても嬉しそうだ。
「小鍛冶は勝ったことあるのか？」
「私は玉狛でよくやってたけど試合って感じでしてないかも……」
「なんだ玉狛なのか。余計ワクワクしてきた」
流石にヒュースは太刀川に敵わないだろうな、と彼女は内心思いながらブースに姿を消す太刀川を見送った。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月26日 0時
