やさしい致命傷 ページ17
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彼女にはどうしても敵わない人間が数人いる。技術的な面であったり実力的な面であったり様々だが、この目の前にいる男ーー生駒達人は別の意味で彼女を参らせていた。
「お、小鍛冶ちゃんやん。ホンマ今日もかわいいな自分」
彼女は生駒からの超豪速ストレートな「かわいい」に非常に弱かった。最初こそは「またまた〜」とそれなりに返していたのだが、生駒からの容赦ない「かわいい」の猛攻撃に彼女はついに膝を着いたのだった。言われる度に恥ずかしくなり少し照れながら目線を逸らすと、それまたかわいいと言われる。
まるでバカップルのように行われるこのくだりはボーダー内でも有名なワンシーンであった。
「ッス……」
「ホンマ毎度照れてかわいいな」
「イコさん何してもかわいい言うやないですか」
「当たり前やろ。小鍛冶ちゃんはな、推しって感じすんねん。推しはかわいいもんやろ」
「推さないでいいですほんと……」
目線を生駒の足元にうつす彼女を見てまた可愛いと騒ぐ生駒に呆れたように隣でその様子を見つめる水上。
「なんや水上、小鍛冶ちゃんかわいいやろ」
「えっ、ちょ」
「いや小鍛冶ちゃんはかわいいですけど」
「ほらな」
うんうんと頷く生駒に彼女は本日二度目の膝を着く結果になる。
彼女は純粋に自分へ向く好意にめっぽう弱い。
ボーダーに入って褒められたことは己のトリオン量と機動力ばかりだった年頃の彼女は、生駒みたいに会う度にかわいいとストレートに容姿の褒め言葉を食らうのは慣れてないのだ。
「水上先輩勘弁してください」
「はは、すまんな。意地悪してもうた」
「でもかわいいのはホントや」と目を細めて笑う水上に彼女はついに逃げ出した。残された水上と生駒は「……お前隠岐か」「どこからどう見ても水上っすわ」「やることが少女漫画やねん」と逃げ出した彼女の背中を見つめながら話の続きをするのだった。
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■ 生駒
Aのお顔が単純にド好みという理由で何かとAを可愛い可愛いヨイショする強面おにいさん。恋愛感情はなく、Aのことは「推し」らしい
■ 水上
生駒隊ダークホース枠。Aのことは射手としては尊敬、後輩としては可愛がっている。その後個人戦でAにゼロ距離でギムレットを投げられることを今の彼は知らない
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 0時
