邂逅するおばけ ページ2
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春の嵐は突然にやってくる。
「きょんくんこの前勉強教えてくれてありがとー！お礼にいいとこのカステラ買ってきたから玉狛で食べ、て」
無遠慮に扉を開け放った彼女ーーー小鍛冶Aは、それまで見たことのなかった3人の顔を見つめピタリと動きを止めた。
手に握られた三門市民御用達のいいところの菓子屋の紙袋が小さく音を立てる。
「お、来たな。紹介するよ。小鍛冶A、よく玉狛に出入りするかなりレアな本部の人間だ。仲良くしてやってくれ」
「お……お邪魔しました」
「あーこら待て待て、帰るなって」
来るタイミングを間違えた、と冷や汗を背中が伝うのを感じとったAはぐるりと体を反転させ、忙しく玄関に向かおうとするが、それを迅は素早く引き止め逃げないよう肩を組んだ。
迅悠一は楽しそうに笑った。今日Aがカステラを持参して玉狛に遊びに来ることも、三雲たちと出会うことも、これから起こるとびきり楽しいことも、すべて視えていたからだ。
突然の来訪者に固まる2人と少し警戒する空閑に、迅は「こいつは近界民のこと、恨んでないから大丈夫だよ」と諭すと理解したように頷いた。
「……？もしかして、この子近界民なの？」
「そうだよ」
「空閑遊真です。どうぞよろしく、こかじ先輩」
「どうも……？」
いまいち理解しきれていない様子のAだが、差し伸べられた無垢な手をないがしろにする必要もないと判断したのか、ゆっくりと手を握り返して小さく頭を下げた。
流れるように行われた邂逅。遅れて三雲修と雨取千佳も自己紹介をし、迅の目的であったAとの顔合わせが終わった。
「本部の人ってことは、こかじ先輩はつよいのか？」
「あー……一応？」
「ちゃーんと強いぞ遊真。なんたってコイツのいるチームはA級1位で、小鍛冶はそのチームのエースだからなぁ」
「エースは太刀川さんだって」
「そうか？おれは小鍛冶がエースに見えるけどなぁ」
「私は射手だもん。太刀川さんの肉壁です」
照れ臭そうに否定を入れるAの本心は、どうやら謙遜でもなく本心のようだと空閑は知る。
空閑のそばにいた小南は「アイツまたそんなこと言って……」とブツブツ文句を垂れている。それは顔いっぱいに不満だと訴えていた。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 0時
