SAT.1 ページ1
腹の痛みを堪えて歩き出す。
行くあてもないから、寮に戻ることにした。拉致られてボロボロにやられた俺は、とにかく疲弊しきっとった。
「あらしげちゃん、どうしてたの?」
食堂の前を通ると、まかないのおばちゃんが声を掛けてきたが、手を払って追い払った。
てか、いつの間にそんな呼び方しとんねん
部屋に入ると、最近替わった名前もよお知らんルームメイトは留守で
お陰で朝までぐっすり眠ることができた。
翌日になると、さてどうしたもんかと考えあぐねる。
自分は明らかに二日の無断欠勤をしとる勘定になる。一般企業なら二日くらいでクビにはならんかもしらんけど、警視庁はどうなんやろ
そんなことをぼんやりと考えとったら、寮の電話に誰かが俺に掛けてきたらしい。名前を呼ばれた。受話器をとると、なんと相手はSATの部隊長やった。
「なんだ、いるじゃないか」
「えぇ、いますけど」
「署に連絡したら、ここんとこ無断欠勤していて連絡もとれないと聞いたぞ。携帯くらい持ってないのか」
持ってたけど、拉致られたときに取り上げられてもうてん
「………失くしました」
「なぜ休んでいた」
「……………ちょっとした体調不良です」
俺は無難な言葉を選ぶ。腹の傷は思ったより深くなかった。
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作者名:そら | 作成日時:2021年2月28日 9時