夕霧�� ページ23
首領の部屋から出たAは
ヨコハマの街から離れた静かな丘にある墓地に来ていた。
上を見上げると、真っ青な空が広がる。
眩しそうに目を細めてから
Aは視線を下の方に移した。
“ YUGIRI ”
そう彫られてある石の前に、
そっと花束を置いた。
そして、目を閉じて手を合わせる。
ｻｧｯ…と優しい風が吹き抜けた後、
Aはゆっくり目を開いた。
『……真逆、夕霧のお墓があるなんて知らなかったわ』
そう呟き、Aは後ろを振り返った。
砂色の外套が風で靡く。
「…私が頼んだのさ」
太宰はそう云って、Aと同じように手を合わせた。
そんな彼を見てから
Aは再び墓に視線を移す。
『デート場所がお墓だった時は、本当に驚いたわよ』
「ふふ、お墓参りって云っても良かったのだけど、
デートって云わないと誰かさんが面白くないからねぇ」
クスクスと笑いながら
太宰は両手をポケットに入れた。
「そう云えば、その誰かさんとあれから如何なったの？」
『………会ってないわよ』
Aは俯く。
「へぇ、そりゃまた何で？
彼なら一晩寝れば回復してる筈だろう？」
『もう、回復してる。
でも、顔合わせるのが気まずくて…』
「何で気まずいの？」
太宰の愉快そうな声に、
Aはバッと顔を上げた。
『貴方ならもう判ってるでしょう…！
自分の気持ち自覚してから私、変なの…
彼を見るだけで何か意識しちゃって』
そう云っているAの頬は、
紅色に染まっていた。
「……ふふ、それも今日で解決するさ」
『え？』
首を傾げるAを無視して、
太宰は再び夕霧の墓を見た。
Aも一緒に夕霧の墓を見る。
「…何時か君にまた出会った時、
この場所を教えようと思ってたんだ。
遅くなって、御免よ」
『いいのよ。
私がポートマフィアに入った時にはもう
貴方居なくなってたじゃない。
…仕方無いわ』
ふふ、と笑ってAは周りの墓を見渡す。
『…蓮華のお墓も作って下さるって、首領が』
「そりゃあ良かった」
そう云って、太宰は真剣な表情をAに向けた。
「…５年前、私が早く駆けつけていて、
君と蓮華ちゃんを保護していれば
こんな事にならなかったかもしれない…」
『なぁに？貴方、責任感じてるの？』
Aはクスリと笑う。
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レタス - とても読みやすい小説でした。ありがとうございました！ (11月5日 10時) (
レス) @page29 id: 56b8d7e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - とても物語の世界に引き込まれる感覚で、最初から一気に読んでしまいました。本当に面白かったです！中也と夢主ちゃんとの関係性もドキドキして読むのが楽しかったです。この作品を見つけられて本当に良かった☺️ (7月9日 22時) (レス) @page30 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
meme - 中也さんと夢主の関係がとても良くて感動しました。文才ありますね。すごいです。 (2021年9月5日 18時) (レス) id: 8a122b7869 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - とても感動しました泣 (2021年4月6日 19時) (レス) id: 0eb527936d (このIDを非表示/違反報告)
しま - 今まで読んだ中で一番深いと思ったお話でした。すごく読みやすかったです！ (2020年7月23日 19時) (レス) id: 2d44a29385 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花翠 | 作成日時：2018年3月18日 20時
