愛しさとは�� ページ12
「太宰さん、貴方が此処にいるのは…」
「中也の所為だから、何か云うなら中也に云って」
太宰の言葉に、芥川は黙る。
「…そろそろかな」
ボソリと呟いた太宰。
そんな太宰を不思議に思い、
Aは彼を見た。
『…如何かした？』
「いいや？」
太宰はニコリと笑い、
彼女の背中をトンっと押した。
その反動でAの身体は前に傾く。
慌てて彼女を支える樋口。
「Aちゃんの事は頼んだよ」
「云われなくてもっ！！」
樋口はキッと太宰を睨んだ。
「止せ、樋口」
ｺﾞﾎｯ…と咳き込みながら芥川は太宰の前に出る。
「…貴方の云う通り、
遠藤Aは
「珍しい…。
君なら敵の所にまっしぐらだと思ったんだけど」
「中也さんが、止めたので」
「まぁ、そうだろうとは思った」
ふっ、と笑い、太宰は背を向ける。
『何処行くの…』
「 “ 頼み ” の
じゃあまた後で、と太宰は軽く手を振って
再び屋敷の中へと入っていった。
『あっ、ちょっと…！』
Aが手を伸ばした時にはもう
太宰の姿は見えない。
「ｺﾞﾎｯ…太宰さんなら大丈夫だ」
そして、芥川はチラリとAを見る。
「…それにしても、
５年前
『黙っていて、御免なさいね』
そう云って、困ったように笑うA。
「あれ…、Aさん、その帽子…」
樋口が気付いたように云った。
『嗚呼…、中也が持っとけって』
「中也さんが帽子を！？」
驚く樋口にAは不思議そうに首をかしげた。
「中也さんは帽子好きで有名なんですよ…！
何時でも何処でも、帽子は肌身離さず持っているので
余程大切な物だと伺っていたんですが…」
そう云って、樋口は帽子を眺めた。
そして、彼女は微笑む。
「…その帽子をAさんに託すって事は、
中也さんはAさんの事、それ程大切なんですね」
『……！』
樋口の言葉を聞いて、
Aは無意識に帽子に触れた。
(……言葉じゃなきゃ、判らないわよ)
そして、キュッと帽子を掴み
深く頭に被せた。
『…早く、戻ってきなさいよ…莫迦』
彼女の呟きは誰にも聞かれること無く、
紅色の空へと消えていった。
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レタス - とても読みやすい小説でした。ありがとうございました！ (11月5日 10時) (
レス) @page29 id: 56b8d7e8d6 (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - とても物語の世界に引き込まれる感覚で、最初から一気に読んでしまいました。本当に面白かったです！中也と夢主ちゃんとの関係性もドキドキして読むのが楽しかったです。この作品を見つけられて本当に良かった☺️ (7月9日 22時) (レス) @page30 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
meme - 中也さんと夢主の関係がとても良くて感動しました。文才ありますね。すごいです。 (2021年9月5日 18時) (レス) id: 8a122b7869 (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - とても感動しました泣 (2021年4月6日 19時) (レス) id: 0eb527936d (このIDを非表示/違反報告)
しま - 今まで読んだ中で一番深いと思ったお話でした。すごく読みやすかったです！ (2020年7月23日 19時) (レス) id: 2d44a29385 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花翠 | 作成日時：2018年3月18日 20時
