Text.13 - Let's begin a lecture about different world ページ13
実のところ自分は招かれざる客なのではないかと警戒心全開で対話に臨んでいたのだが、むしろ話せば話すほど未知の世界に興味を惹かれて、途中からすっかり聞き入ってしまっていた。彼のまとめ方が上手いのも理由の一つだろう。
しかし同時に、自身の置かれている状況に対する謎がますます深まっていったのも事実。
「ーーーーと、およそこのような現状になっているわけです」
「……」
「……大丈夫ですか？」
到底処理しきれない情報の乱立に、思わず頭を抱える。
「ちょっと整理させてもらっていいですか……」
「ええもちろん」
言われるまでもなくと寛容に頷く目の前の彼は、エーミールさんという。
茶髪よりも色素が薄いその髪はクリーム色に近く、七三……六四？のバランスで前髪が分かれている。顔は端正で、柔和な人柄が目鼻立ちにもどことなく出ている気がする。
第一印象で受けた理知的な雰囲気を纏っているからか、学校の先生を彷彿とさせる佇まいで、面と向かって話をすると無意識に背筋が伸びてしまう。
ちなみにエーミールさんは医務室の先生ではないらしい。医師不在の間、代理で医務室の管理及び患者の面倒を見ているとのこと。本職は文官だそうで、先程まで筆を走らせていた物もトラブルシューティング的な書類……とどのつまり苦労人っぽい。
さて、話を少し戻して、本題は私が今いる場所。
ここは城塞中央部一階にある医務室。保健室なんて平和ボケした推測もあながち外れてはいなかったが、かといってこれからイケメンの先生と親睦を深める恋愛シミュレーションが始まるわけでもない。恋愛ゲームやったことないけど。
「……私、自分の部屋でマスター……あ、いや、仕事場の上司とゲームをしてたんですけど……変な話、突如出現した穴に落ちて……気付いたらここにいたんです」
「穴……なるほど、時空の捻れが垂直に開いてしまったんですね」
ふむぅ……と顎に手を当てて一人納得しているエーミールさん。
……いや時空の捻れってなんぞ!?
「そんな、SFじゃあるまいし……ネコ型ロボットじゃあるまいし……」
「ネコ型ロボット？」
「なんでもないですッ！それより、時空の捻れって何ですか……!?」
私のいた世界とは別の場所だ、なんて普通なら信じられないことも彼の口から説明されたが、ひとまず信じよう。
だって穴空いてたし。実際落ちたし。
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作者名：桜音風湊 | 作成日時：2018年4月26日 21時
