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「トントン！！」
トン氏の存在に気づき、僕の腕から抜け出してトン氏の足にしがみつくA。
……空っぽになった腕に、ほんの少し虚しさを感じた。
「Aちゃん、元気やったか？」
「うん！！今ね、お絵描きしてたの！」
トン氏にすっかり懐いている様子のA。
こんなに2人が仲良くなっているなんて、知らなかった。
…それもそうか、昔僕がAを邪魔者扱いしてる間もトン氏はAの事を可愛がっていたのだから。
「…話があるんや、大先生。」
「………なんや。」
真剣な面持ちのトン氏に、少し気圧されてしまう。
トン氏の口が開かれる動作が、スローモーションのように感じた。
「Aちゃんを、養子に貰おうと思っとる」
「………え？」
余りにも予想外なその言葉に、腑抜けた声が出る。
僕の表情を見て、トン氏はため息をついてから言葉を続けた。
「ずっとな、本当の親に育てて貰うのが1番や…って思って言い出さんかった。…でもな、思ってん。それが本当にAちゃんの幸せなんか？」
「お前は全然Aちゃんのこと見てへんやん。自分で育てることもせずに全部乳母さんに任せきりで、こんな小さな部屋に閉じ込めて。…1度でも、Aちゃんの気持ち考えたことあったか？」
トン氏の言っていることは全て正論。
故に反論することも何も出来ない。
ただ、トン氏の言葉がガラスの破片のように胸に突き刺さるだけ。
何も言い返せず俯いていると、さらに言葉が降ってくる
「俯いとんちゃうぞ、自分がしたことやろ現実見ろ。…お前はどう思っとるんや？Aちゃん手放してええんか？」
…もしかしたら、Aはトン氏に育てられた方が幸せじゃないのか。
トン氏は僕みたいに、全ての世話を乳母に任せたりなんかしない。
忙しいながらも、ちゃんと自分の手で立派に育ててくれるだろう
…それなら、ちゃんと愛してもらえるなら。
トン氏に育てて貰った方が、幸せじゃないか…
「………分かった。Aのこと頼んだわ、トン氏。」
そう言ってゆっくりと立ち上がる。
トン氏は眉をピクリと動かし、「ええんか？」と聞いてきた。
「その方がAも幸せやろ。…ごめんな、A。これからはトン氏に育ててもらうんやで」
そう言い残し、部屋を出ようとする。
もうこの部屋に来ることも無くなるんやなぁ…と思うと、途端に虚無感に襲われ目の前が掠れた。
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すみれいん(プロフ) - 読み返すと先の内容がわかっているため涙が出ます。違う、そうじゃない、違うんや…とつ 呟きながら読ませていただいてます！ (2020年10月3日 21時) (
レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - 涙が凄い出てくる....ヤバイ、とっても良い作品でした。 (2020年3月10日 14時) (レス) id: a5ab59d983 (このIDを非表示/違反報告)
のと(プロフ) - あっ......ちょっとさっきの文章だめでしたかね...？すみません (2020年1月3日 14時) (レス) id: 2f54580e61 (このIDを非表示/違反報告)
のと(プロフ) - た。感動しました！ありがとうございます！ (2020年1月3日 14時) (レス) id: 2f54580e61 (このIDを非表示/違反報告)
のと(プロフ) - え..何この物語凄い...！！最後のこの話終わってないやんけっ！！やべぇ！！ってなった時、心が射抜かれた感じでめっさ衝撃的でした！！...あと、私事ですが「金を運んでんの馬なんじゃね？？いやそれは無いか....っえ！？馬じゃん」ってなってすっごく喜んでしまいまし (2020年1月3日 14時) (レス) id: 2f54580e61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音羽リン
| 作成日時：2019年12月21日 11時
